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2006年09月17日(日) 01時46分

9月17日付・読売社説(1)読売新聞

 [貸金業法改正]「多重債務への入り口をふさげ」

 多重債務への入り口となりかねない高利の貸し付けは、できるだけ早くなくすべきだ。

 自民党が、消費者金融業者らの貸付金利上限引き下げなど、貸金業制度改革案を決めた。出資法の年29・2%の上限金利を下げ、利息制限法の年20〜15%の上限との間のグレーゾーン(灰色)金利を撤廃する。

 焦点となっていた灰色金利の廃止後でも既存の借り入れがない顧客向けに限って、短期・少額の融資に高金利を認める特例措置は、期間を2年、金利を25・5%とする。金融庁が示した原案の「5年、28%」と比べれば、圧縮された。

 安易な特例の容認は、金利引き下げで返済負担を軽減し、多重債務者の発生を防ぐという改革の趣旨を骨抜きにするとの批判が、自民党内からも上がったためだ。貸金業法など関連改正法の公布から上限金利引き下げまでの期間も、原案の4年間から3年に短縮された。

 金利引き下げまでと、その後の特例容認期間を合わせ、灰色金利が事実上残る期間は9年から5年に短くなった。特例が必要かどうか、金利引き下げまでに見直すことも盛り込まれた。本来無効な金利を、長い期間温存する必要はない。特例は設けない方向で見直すべきだ。

 金融庁、自民党は、「特例容認は、金利下げで審査が厳しくなり、お金を借りられなくなる人のため」と説明する。

 しかし、そうした人に対するセーフティーネット(安全網)の整備は、政府の仕事だ。公的な貸付制度や政府系金融機関による融資の拡充などで対応すべきであり、その役割を貸金業者に委ねるのは筋違いだろう。

 自民党の決定には、政府が多重債務者対策本部を新設することも、盛り込まれた。ヤミ金融の取り締まり強化や、すでに多重債務に陥った人に対する相談・支援の充実に加え、多重債務者の予備軍を作らない安全網の検討を急ぐべきだ。

 改革では、金利引き下げまでは、利息制限法を超える金利は支払い義務がない旨を契約書に記載させる方向だ。借り手が利息を任意に支払ったと見なされ、過払い利息を取り戻すのが難しくなる恐れがある。借り手保護よりも、灰色金利の有効性を確保する手だてに映る。

 一方で、ヤミ金融への罰則強化や、過剰貸し付け禁止の強化など、多重債務問題の解決に有効な対策も改革案に盛り込まれた。政府・自民党は、秋の臨時国会に関連法の改正案を提出する予定だ。

 多重債務が社会問題化するなか、対策は急いだ方がいい。特例の必要性を含めて再考したうえで、実効ある改革に資する法案を作らねばならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060916ig90.htm