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2006年09月16日(土) 00時00分

子どもを守ろう 奈良女児殺害・判決を前に<上>  東京新聞

 奈良市の小学一年、有山楓(かえで)ちゃん=当時(7つ)=が一昨年十一月、通学路で連れ去られ、殺害された事件で、わいせつ誘拐、殺人、死体遺棄などの罪に問われた小林薫被告(37)の判決公判が二十六日、奈良地裁で開かれる。検察側の「死刑」求刑に、どんな審判が下るのか。判決を前に、事件と公判の経過や焦点を三回にわたり振り返る。 (岩岡千景)

 今も、そこにはぬいぐるみや飲み物が供えられている。奈良県平群町の道路の側溝。二〇〇四年十一月十八日未明。女児が遺体で見つかった場所だ。

 「あんときは報道さんが一気にきはったけど、今は静かですわ」。近くの畑にいた女性(68)は、農作業の手を休めて話した。

 女児は前日、下校後に通学路で行方不明になった。懸命に捜し回っていた母親の携帯にはその夜、「娘はもらった」というメールが届き、女児の遺体の写真が添付されていた。「次は妹だ」。報道が落ち着きを見せ始めた翌月十四日、犯人は母親の携帯に再びメールを送信。陰惨な手口は世間を揺るがせた。

 元新聞販売店員、小林薫被告(37)が奈良県警に逮捕されたのは、年の瀬も押し迫った三十日だった。その後の調べで、小林被告は犯行当日、家路を急ぐ女児に「どうしたん? 乗せていってあげようか」と優しく声をかけて車で連れ去り、自宅マンションで浴槽に沈め水死させたことが明らかに。殺害後に遺体を傷つけてもいた。

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 昨年四月十八日の初公判で、小林被告は罪状を「間違いありません」と認めたが、約一年二カ月にわたる十回の公判では、犯行の経緯や殺意に対する供述を二転三転させ、場当たり的な返答も重ねた。「死刑になりたい」と繰り返し、理由を問われると「生きていても面白くない」などと答えた。

 だが、今年五月の第八回公判の被告人質問で、高野嘉雄弁護人が「そうじゃないやろ。自分がやったことを考えたら、それ以外ないだろうというのが本当の気持ちやろ」「謝罪とか反省とか、こういう場で言いたくないんやろ。それで刑を軽くするなんてことは、許されないと思うとんのやろ」。続けざま、語気を強めて尋ねると、小林被告はそれぞれの問いに、いつもよりはっきりと「そうです」と応じた。

 小林被告は幼少のころから弱視で、小学生の時には「メガネザル」などと呼ばれていじめに遭っていた。小学四年の九歳のとき、弟の出産時に母親を亡くし、父親と祖母に育てられた。

 公判で「父親には孫の手やシャッターを上げ下ろしする棒、ゴルフクラブ、金属バットなどで殴られた」と語り、この事件で「父親に復讐(ふくしゅう)してやろうと思った」とも言った。父親は事件後、亡くなっている。

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 母の死とともに生まれた弟は、脳性まひで重度の障害が残った。幼いころの小林被告を知る女性は、当時をこう振り返る。「お母さんが亡くなった時、赤ちゃんが大変で、周囲の大人は赤ちゃんばかりかまった。だけど彼のあの大事なとき…寂しくつらかったときに、周囲がもっと彼を気にかけていたら、ちょっとは違っていたかもしれません」

 「いつか、お母さんのいる天国へ、おばあちゃんも、お父さんも、ぼくも、弟二人も行く」…。小林被告が小学校の卒業時につづった作文には、涙を流す少年の絵がかき添えられている。

 女性は言う。「小林少年もほかの子と変わらない、普通の子でした」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060916/ftu_____kur_____000.shtml