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2006年09月16日(土) 00時00分

妻生きていること感謝 死刑確定で河野さん朝日新聞

 「教祖」の口から、事件の真実は何も語られぬままだった。オウム真理教(アーレフに改称)の元代表・松本智津夫(麻原彰晃)被告の死刑が15日確定した。12年前の6月、松本市で起きた松本サリン事件。猛毒ガスが漂ったその場所は、少し変わったものの、当時の光景を残す。遺族や被害者らの悲しみ、心の傷、後遺症はなお癒えない。

 住宅地に猛毒のサリンが噴霧されるという異常な事件。自宅で被害に遭い、一時犯人扱いされた河野義行さん(56)は、いまだ意識の戻らない妻澄子さん(58)と、穏やかな生活を送っている。

 脳に損傷を受け、寝たきりとなった澄子さんは松本市の福祉施設「ささらの里」で療養生活を続けている。ベッドに横たわる澄子さんを、河野さんは頻繁に訪ねる。全身をふいたり、マッサージしたり。耳元で最近の出来事を話しかける。腕枕をすると、表情が和らぐような気がする。

 好きな音楽が楽しめるよう、ベッドの上の棚に小さなオーディオ機器。「脳にいい」と聞けば、どんな食品も取り寄せた。「いいと言われることは何でもしてやりたい」と河野さんは言う。

 事件当日は蒸し暑い夜だった。サリンに襲われてまず、庭の飼い犬が苦しそうな声を発して息絶えた。その後、家の中にいた澄子さんが口から泡を吹いて倒れた。

 「妻が苦しんでいる」

 自ら119番通報した後、意識がもうろうとした河野さんは、長女とともに病院に運ばれた。

 7人死亡、多数が重軽症という大惨事。その後のいわれのない嫌疑。長男には「間違いで死刑になるとしても、自分にやましいところはない。しかし、そういうこともあることを覚悟するように」と伝えた。

 それでも、犯人への憎しみは持たなかった。「現実は現実。与えられた人生を、恨みの感情で生きるのは損」と思う。

 小学生のころの破傷風、バイク事故、そしてサリン事件。さまざまな場面で死に直面し、「死はいつも隣にある」という観念が、「与えられた現実の中で最大限に生きる」という態度を培ったと、河野さんは話す。

 ただ、妻が死んでいたら気持ちのやり場に苦しんだだろう。「死んでいることと生きていることは全然違う。(松本被告への)憎悪より、妻が生きていることへの感謝。この方がはるかに大きい」

 子供たちは自立し、妻と2人の生活に、幸せを感じる日々。これまでの体験を生かし、犯罪被害者の支援に取り組んでいきたいと思っている。(古賀大己)

    ◇

 河野さんは15日、澄子さんに死刑確定を報告した後、記者会見し、「実質的な審理は一審のみで、松本被告から何も語られることがなかった。消化不良で、とても不満だ」と語った。
 控訴趣意書を期限内に東京高裁に提出しなかった弁護団の対応には「被告の利益にかなっておらず、ばくちを打つような弁護方針は極めて疑問。結局、真実はわからないままだ」と批判した。

http://mytown.asahi.com/nagano/news.php?k_id=21000000609160003