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2006年09月16日(土) 00時00分

兵庫県豊岡市のコウノトリ放鳥1年 「放し飼い」状態に朝日新聞

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昨年放鳥されたコウノトリ(左)も飼育鳥やサギに交じって、おけの餌を食べている=15日、兵庫県豊岡市の県立コウノトリの郷公園で

 人工飼育された国の特別天然記念物コウノトリ5羽が兵庫県豊岡市の県立コウノトリの郷公園で放鳥されてから24日で1年。当初こそ大空を広く飛び回り、野生復帰は順調にみえたが、現在は郷公園に居着いてしまうという「放し飼い」状態で、研究者を悩ませている。一方、同市内で栽培された米に全国から注文が舞い込み、観光客も増えるなど、地元の活性化には確実に貢献している。

 ●放し飼い?

 秋篠宮ご夫妻の立ち会いで、昨年9月に放鳥された5羽は当初、徐々に飛行範囲を広げ、今年1月には1羽が京阪神へ4日間計350キロの旅に出た。4月には7歳のオスと5歳のメスがペアになり、国内の自然界では38年ぶりに産卵。孵化(ふか)には失敗したものの、「順調」と研究者を喜ばせた。

 ところが5月以降、5羽は郷公園にとどまり、ほとんど園外に出なくなった。羽を切られた鳥が人工飼育されている天井のない開放型ケージに時折舞い降りては餌の魚を横取りしている。完全な自由より、餌を探す必要のない楽さや、仲間がいる安心感を選んだらしい。「野生」をいつでも見られるので観光客は喜ぶが、郷公園は「これでは野生復帰ではなく放し飼いだ」と危機感を持った。

 そこで8月、2カ所ある開放型ケージの片方を封鎖。さらに、もう一方は餌を横取りできないよう改造することにした。しかし、市民から「かわいそう」「園の外は餌が足りない」などの声が多数寄せられ、改造を断念。池田啓・郷公園研究部長は「園内で餌を食べられるうちは外で餌を探す努力をしないし、追跡調査して市内の餌場環境を研究することもできない」ともらす。

 郷公園は、放鳥1年に合わせ今月23、24日に計7羽を新たに放鳥する。今回は公園から約2キロ離れた地点で放す計画で、園外に生息拠点をつくらせる狙いだ。

 ●観光には貢献

 除草剤や化学肥料の使用を抑え、冬も田に水を張って餌となるカエルやドジョウを増やす「コウノトリ育む農法」は、市内で急速に広まっている。05年度に50ヘクタールだったのが06年度は100ヘクタールに倍増。2年後には200ヘクタールになりそうだ。

 市の調査では、一般の田の6倍のカエルが繁殖していた。同農法で栽培された「コウノトリの郷米」は、無農薬タイプ5キロで3480円と通常より4割高いが、全国からの注文に応じきれないほどの人気だ。

 8月、郷公園には全国から約4万8千人が訪れた。年間では40万人を超える勢い。人口9万2千人の豊岡市にとって、城崎温泉と出石城下町に続く観光名所になった。同市の佐竹節夫コウノトリ共生課長は「豊かな環境を創造する取り組みは経済的な効果も生むというモデルをつくりあげたい」と話す。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200609160021.html