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2006年09月15日(金) 07時14分

“邪教”キリスト教弾圧激化 中国全土で教会300撤去産経新聞

 【北京=福島香織】中国当局が非公認キリスト教徒に対する弾圧を強めている。この1年で拘束されたキリスト教徒は全国で約2000人にのぼり、浙江省ではこの3年に300の教会が強制撤去された。共産党政権への不信感を埋める形で信仰が広がっているといった事情が背景にあるとみられ、全国7000万人ともいわれる「隠れキリシタン」への迫害は、求心力を失いつつある共産党政権の不安とあせりを浮き彫りにしている。 

 教会関係者らの話によると、7月29日、杭州市蕭山区で完成間近のプロテスタント系教会建設現場に突然多数の警官や私服公安関係者が現れてブルドーザーが進入した。「警官らが撤去を阻止しようとした信徒らを殴打していた。女性や老人も容赦なかった」「『神様に助けてもらえよ』とののしりながら暴力を振るう警官もあった」との証言もある。このとき信徒70人が一時拘束され、うちリーダー格とされた6人が「暴力扇動」容疑で逮捕された。

 続いて8月21日には、紹興市の大林教会も撤去され、9月1日には福建省福州市平潭県で2カ月前に建てられたばかりの教会が取り払われるなど取り締まりが続けられている。

 こういった非公認教会は、信徒らの寄付によって建設費がまかなわれている。中国では1970年代後半の改革開放後、社会主義時代にはなかった医療、失業問題、貧富の差に苦しむ農民や都市労働者の間で「救済」を与えてきた。実際に農民の信徒らに入信の動機をただすと「病気になったとき病院は富裕層しか相手にしないが、神さまは誰でも助けてくれる」(河南省鄭州市の農民女性信徒)といった現世利益的な理由が多い。90年代後半からは、拝金主義や汚職が蔓延する共産党政権に幻滅した知識人層、富裕層にも信徒が増え、現在は共産党員を上回る約7000万人にのぼるとの予測も出ている。寄付の高額化もみられるという。

 しかし、信仰の自由を認めない中国当局はこの教会そのものを当局への抵抗の象徴とみており、組織崩壊に向け拠点となる建造物の撤去の動きも加速。米国の対中キリスト教人権組織「対華援助協会」の報告によると、浙江省だけでこの3年に300にのぼる教会が建てられては壊され、聖職者・信徒の逮捕・拘束は2005年5月から06年5月までの1年間に全国15省・市で1958人にのぼる。

 最近では宗教弾圧の具体事例を告発し続け、宗教の自由を求める運動の象徴的存在だった高智晟・弁護士(42)が逮捕されたほか、蕭山教会撤去事件をネット上で告発した元中国海洋報記者の●(=外のしたに日)愛宗氏らが一時拘束されるなど、知識人層への圧力も露骨になってきている。

 こういった弾圧強化は、元末期の紅巾の乱や19世紀半ばの太平天国の乱など、宗教秘密結社が体制崩壊に強い影響力を発揮してきた中国の歴史が関係あるといわれ、「求心力を失ってきた共産党はキリスト教勢力の拡大に脅威を感じている」と、北京在住の信徒で作家の余傑氏は指摘する。

 中国憲法は宗教の自由を認めているが、共産党の指導を受けない非公認宗教は「邪教」とされ、弾圧が正当化されている。

【2006/09/15 東京朝刊から】

(09/15 07:14)

http://www.sankei.co.jp/news/060915/kok010.htm