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2006年09月14日(木) 00時00分

特例金利 だれを救済したいのか 東京新聞

 貸金業規制強化をめぐる政府・与党の調整が土壇場でもつれている。「業界配慮」と批判が強い特例高金利の存廃が争点だ。今忘れてならないことは、多重債務者問題の解決という法改正の目的だ。

 金融庁の原案では、少額短期の融資に限って28%の特例金利を認めている。

 改正貸金業規制法の成立から施行まで一年以内。経過措置が三年あり、特例措置が五年まで、最長で九年間、出資法の上限である29・2%に近い高金利が続いてしまう勘定だ。

 急激な利下げで貸金業者の淘汰(とうた)が進み、貸し付けの審査も厳しくなって、困った借り手が悪質、違法なヤミ金業者に走るのを防ぐための措置だという。

 ヤミ金の横行は断固阻止すべきである。だからといって、28%は高すぎる。九年の猶予は長すぎる。生活者目線には、「業者配慮」の印象が勝ちすぎる。

 日弁連の試算では、年利28%で限度額の五十万円を借りて規定の一年で完済するには、月々五万円以上の返済が必要という。低所得者には荷が重く、救済になっていない。ヤミ金は、こういう借り手をもみ手しながら待っている。ヤミ金の規制は、特例金利の議論とは関係なく、強化されるべきなのだ。

 特例が抜け穴と化す「潜脱行為」の恐れも強い。

 五百万円、三カ月まで適用できる事業者特例は、事業者を装わせて個人に貸し付ける隠れみのにされやすい。約55%の特例高金利が認められてきた日賦貸金業のケースでも、本来の借り手は飲食業などに極めて限定されるはずなのに、貸し付けは主婦ら個人に広がった。

 原案にある利息制限法の金利区分の見直しも問題をはらんでいる。

 「元本十万円未満」の上限金利が20%、「十万円以上百万円未満」が18%だったのを、「五十万円未満」「五十万円以上五百万円未満」にそれぞれ額を引き上げる。事実上の利上げである。業者側の言い分がそのまま通った感がある。

 与党内部も、多重債務者救済、上限金利引き下げの方向性では一致しているという。だとすれば、特例期間の利率や期間を小幅に見直すことよりも、「特例」自体をきっぱり取り下げて、相談体制や消費者教育の拡充、公的融資の広報など、経過期間内に可能な救済対策を手早く打ち出した方がいい。

 貸金業者が借り手に多額の生命保険をかけ、多数の自殺者から保険金を受け取っているという業界の現実は見逃せるはずもない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060914/col_____sha_____003.shtml