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2006年09月14日(木) 01時27分

9月14日付・読売社説(1)読売新聞

 [消費者金融]「命が『担保』の契約は許されるか」

 これでは、命を借金の「担保」にするようなものだ。

 消費者金融会社の大半が融資契約時に、原則として借り手全員に加入させている消費者信用団体生命保険の問題である。

 消費者金融会社が保険料を支払い、借り手が死亡すると、借金相当額の最高300万円の保険金を受け取る契約だ。

 こうした保険が広く理解を得られるのかどうか。金融庁は実態を調査し、適切な措置を講じるべきではないか。

 問題になったのは、借金苦で自殺した兵庫県の女性(当時66歳)の遺族が3月、神戸地裁に提訴したことからだ。「保険は公序良俗に反し、本人の意思確認が不十分だった」と訴え、消費者金融大手のアイフルなどを相手に保険金請求権の不存在と慰謝料の支払いを求めている。

 融資契約書には細かい字で「保険加入に同意する」などと記載されているだけで保険会社名もない。借り手の大半は十分な説明を受けず、加入を知らない。

 同じ団体生命保険でも、死亡後の家族のことを考え、本人の意思で保険料を支払う住宅ローンとは事情が違う。

 金融庁の調査では、昨年度、消費者金融大手5社が支払いを受けた死亡保険金は3万9880件、うち3649件が自殺によるものだった。死因不明者の中にも自殺者はかなり含まれるという。

 金融庁の貸金業制度等に関する懇談会では、「借り手が自殺すれば貸した金を回収できることが、過酷な取り立てを誘発している」と、生保契約の禁止を求める意見が出ている。消費者金融元社員らの「客が自殺すると、『ノルマが済んだ』とほっとした」という証言もある。

 金融庁の指導で、生保各社と消費者金融会社は来月から、融資と保険加入の契約書を別々にするなどの是正を図る。次期国会に提出予定の貸金業規制法改正案にも、業者に対する生保契約の説明書面の交付の義務化を盛り込むという。

 だが、生保加入が融資の条件になったままでは、弱い立場の借り手は、加入を拒否しにくいのではないか。形式的な改善だけで十分とは言えまい。

 消費者信用団体生命保険は、自殺などを見込み、保険料率はほかの保険より高い。消費者金融会社の負担分は、借り手への高金利の一部に転嫁されている。

 加入の勧誘という営業努力もなしに消費者金融の借り手から保険料を稼ぐ。一般の人への保険金支払いは厳しいのに、消費者金融会社には、遺族に知らせないまま、簡単に支払う。

 契約が合法だとしても、生保各社には、自殺者を生む要因になっている状況を改める社会的責任があるだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060913ig90.htm