悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年09月14日(木) 00時00分

貸金業規制に『特例金利』 批判的な世論強まる 東京新聞

 消費者金融など貸金業の規制強化策をめぐり、金融庁や自民党・公明党の調整が大詰めを迎えている。今週内にも結論が出る見通しだが、「少額・短期」の融資などについて特例で高金利を認める方針が示されたことに対し、日本弁護士連合会や消費者団体などは「業界保護の姿勢が強すぎる」と猛烈に抗議している。特例に批判的な世論も強まっている。 (白井康彦)

 日弁連の上限金利引き下げ実現本部は十二日に緊急記者会見を行って「特例に絶対反対」と訴えた。配布文書の中には同調している団体として主婦連合会、東京都地域婦人団体連盟、労働者福祉中央協議会など二十二団体が挙げられていた。

 多重債務者救済団体「埼玉夜明けの会」の事務局次長をしている吉田豊樹さん(34)が元多重債務者の気持ちを明かした。五年前、ヤミ金にまで手を出し、返済できないと思い詰めて首つりの自殺未遂もした。「貸金業の高金利が原因の多重債務者は年間何千人と自殺している。即刻、上限金利を引き下げてほしい」

    × ×

 貸出上限金利についての現行の規制はすごく分かりにくい。

 出資法は年29・2%で、利息制限法は15−20%。出資法の上限金利を超えると刑事罰の対象になり、利息制限法の上限を超える部分の利息は民事上で無効扱いされる。

 二つの法律のはざまの金利帯が「グレーゾーン金利(灰色金利)」。一定の要件を満たせば、グレーゾーン金利が有効とみなされる「みなし弁済規定」が貸金業規制法にあるが、裁判所は要件を厳格に解釈している。

 消費者金融会社の融資のほとんどがグレーゾーン金利で、「この高金利が多重債務問題の根本原因」と日弁連などが指摘してきた。

 こうした声を受けて、金融庁は「上限金利は原則的に利息制限法の水準に一本化」の方針を打ち出したが、今月に入って自民党に提出した貸金業制度の見直し案で「特例金利」の案を示した。

 上限金利は年28%で、個人向けは「貸し出し元本五十万円まで返済期間一年以内」が条件。事業者向けは「貸し出し元本五百万まで契約期間三カ月以内」といった条件。

 見直し法案は、成立の一年先に施行で、それから三年間は現行の上限金利を変えない経過期間。その先が特例が適用される期間で「最長五年」としており、金融庁はその理由を「制度見直しに貸金業者らが対応する経過期間は必要。また、一気に金利を引き下げると、貸金業者の淘汰(とうた)などによって、正規の貸金業者に借りられなくなった人がヤミ金に走るケースが多発しかねない」と説明する。

 このほか、利息制限法の上限金利の見直しについても、現行の「貸出元本額十万円未満は年20%、十万円以上百万円未満は18%、百万円以上は15%」を「五十万円未満は20%、五十万円以上五百万円未満は18%、五百万円以上は15%」に変えることを提案している。

 日弁連などは「法案成立後に九年間も28%の高金利が容認されるのは、業者保護そのもので到底認めがたい」と猛反発。事業者向けの特例金利についても「事業者でない人を事業者だと偽って特例金利で貸すような法の抜け道探しの営業がはびこりかねない」と批判する。

 利息制限法の上限金利の見直しについても「消費者金融の利用者の大半は利息制限法上限金利引き上げの対象になる。一方で、業者の利益が増える。とても認められない」と、絶対反対の姿勢だ。

    × ×

 上限金利引き下げ運動は、消費者問題では前例がないほど盛り上がっている。引き下げを求める署名は既に三百万通以上も集まった。地方議会の意見書も三十九都道府県議会、八百八十を超える市町村議会で採択済み。各地で集会や街頭活動も頻繁に行われている。日弁連は十月十七日に大規模な国会包囲デモを行う準備も進めている。

 こうした批判的な世論を意識して、調整作業では、年利28%を25%程度にする案や、特例適用の期間を短縮する案も出ており、流動的な情勢だ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060914/ftu_____kur_____000.shtml