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2006年09月13日(水) 17時43分

養子縁組、組織犯罪の温床に 名字かえて詐欺、相次ぐ朝日新聞

 実体のない養子縁組を繰り返す手口が組織犯罪の温床になり、各地で摘発されるケースが相次いでいる。振り込め詐欺や融資金詐欺に悪用される場合が多く、養子縁組の「常連」もいる。現行法では、明らかに不審な縁組でも、書類が整っていれば自治体は受理するのが原則で、法務省は養子・養父母の双方が「合意」している縁組を防ぐのは難しいという。

東京都大田区が調べた養子縁組の実態

 この制度を悪用した詐欺容疑などで、北海道警は今年に入って暴力団員ら計55人を逮捕した。2〜6月、養子縁組を繰り返して名字を変え、住宅金融公庫から融資金約1億6000万円をだまし取ったとして暴力団関係者や不動産仲介業者を主犯格とした14人を逮捕した。

 名字を変えて住宅金融公庫から融資金を受け、「特典付き」マンションを購入して、特典である購入費の10%分の現金や商品券を得ていた。融資金は公庫からマンション販売会社に支払われるため、「10%分」が容疑者らの懐に入るという仕掛けだ。養子役には多重債務者を選び「養子縁組をすれば、借金は帳消しになる。マンションも買える」などと誘う。養父には借金や前科がない知人を探した。

 1回につき手数料は2万〜3万円程度で、8回縁組を繰り返した人もいた。年齢差は10歳程度だが、1歳しか違わない組み合わせもあった。「ブラックリストに載ると融資が受けられない。名字を変えるため養子縁組を利用した」と容疑者の一人は供述したという。

 道警は同様の手口で養子縁組を繰り返し、東京の金融会社から個人向けの事業融資計約3800万円をだまし取った疑いで別の組織の暴力団関係者ら41人も逮捕した。

 愛知県警は6月、養子縁組を悪用して携帯電話の契約をしていた販売会社社長を逮捕した。犯罪に使われる闇携帯の卸元とみられる。埼玉県では同月、銀行から融資金をだまし取ったとして、また宮崎県でも7月、消費者金融から不正に現金を引き出させたとして、それぞれ容疑者グループが逮捕された。

 警察庁は「多重債務を逃れる手段だったのが、最近は振り込め詐欺に使う携帯電話や銀行口座の開設に悪用されるようになったようだ」とみる。

 東京都大田区は04年度中の区内の養子縁組を独自に調査した。縁組を短期間で繰り返したり、養父と養子の年齢差がなかったりした「不自然」な届け出が16%あった。担当者は「戸籍をたどると、何人もの人が複雑につながり、グループができ上がっているのが分かる。1カ月に2、3回くる常連もいるが、どうしようもできず歯がゆい」という。

 全国の自治体で構成する全国連合戸籍事務協議会(事務局・東京都千代田区)は02年から、成人同士の養子縁組には家庭裁判所の許可を要件とするよう求めてきた。現行制度では届け出書類がそろっていれば窓口は受理するしかないからだ。

 養子縁組の悪用を重くみて、法務省は防止の手だてを法制審議会に諮問した。当事者が知らないうちに養子縁組される被害を防ぐため、当事者の養父母・子を窓口で本人確認し、できなかった人には郵便で養子縁組届け出があったと通知できるよう法改正する検討をしている。しかし目的はどうであれ双方が縁組に同意しているケースでは、その真意を確認することはできないとし、対応の難しさをうかがわせている。

http://www.asahi.com/national/update/0913/TKY200609130260.html