悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年09月12日(火) 12時07分

高専生殺害、実名掲載の読売紙面を閲覧制限読売新聞

 山口県周南市の徳山工業高等専門学校で女子学生(20)が殺害された事件で、7日に遺体で発見された藤村元紀容疑者(19)の実名と顔写真を掲載した読売新聞について、大阪府や三重県の公立図書館が閲覧を制限していたことが分かった。

 新聞の閲覧制限は極めて異例で、識者らからは「公的な役割を担う図書館が、知る権利を制限すべきではない」との声が上がっている。

 大阪府豊中市の市立9図書館は、藤村容疑者の実名などを掲載した8日付の読売新聞朝刊と夕刊を一時的に閲覧させない措置を取った。同市によると、8日は通常の扱いだったが、9日になって、実名と顔写真が掲載された朝刊、実名が複数回載った夕刊を撤去。「(8日付朝夕刊は)少年法の趣旨から引き揚げ、取り扱いを検討している」とのおことわりを張り出した。また、9日付朝刊については、名前の部分に付せんを張ってめくらないと見られないようにした。

 会見した同市の図書館を統括する市立岡町図書館の谷垣笑子館長は「管理職にあたる他の館長1人と電話で協議し、少年法の趣旨を尊重する上で閲覧を制限した。その後、報道各社の見解が分かれていることを知り、各図書館長の会議で図書館側が判断すべきではないとの結論に達し、10日以降は閲覧できるようにした」と説明。その上で、「どう判断していいか分からなかった。結果として閲覧を制限してしまった事実は重く受け止めたい」とした。

 奈良県香芝市の市民図書館も「少年法の趣旨に反している」として、読売新聞の8日付朝夕刊の記事に紙を張って見えないようにしているほか、大阪府箕面市の市立5図書館は、一時的に閲覧コーナーから引き揚げ、希望者には申請手続きを求めた。

 津市の三重県立図書館でも8日から、顔写真と実名部分にシールを張り、見えないように制限。同館の原豊資料課長は「少年法の理念に照らし、公的機関としてふさわしくないと判断した」として、当面、閲覧制限を続ける方針という。

 一方、容疑者の自殺が確認される前に実名と顔写真を掲載した「週刊新潮」の扱いについては、掲載部分にカバーをかけて閲覧できないようにしたり、開架場所から撤去して申し出があった場合だけ閲覧できるようにしたりする図書館もあった。

 日本図書館協会は「図書館の自由に関する宣言」の中で、「人権またはプライバシーを侵害するもの」などに限って制限されることがあるとしているが、その場合も「極力限定して適用」すべきだとしている。同協会は「新聞の閲覧制限は聞いたことがない。表現の自由の観点から、極めて慎重な判断が必要だ」と対応を疑問視。

 また、服部孝章・立教大教授(メディア論)も「今回の実名報道に対する賛否や是非はともかく、図書館は市民に『伝える』という公的で重要な役割を担っており、閲覧を制限すべきではない。個人的には、今回のケースで実名報道する意義があったかどうか疑問だが、いろいろな意見があればこそ、自由に閲覧できるようにすべきだった」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060912it05.htm