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2006年09月11日(月) 16時51分

「テロ監視」街の隅々に 窮屈さ感じる場面も朝日新聞

 米同時多発テロから5年、政府が「テロとの戦い」を掲げる日本でも、日常生活の光景は変わってしまった。空港の保安検査の長い列、駅を行く人をとらえるカメラ、フェンスに閉ざされた釣りスポット。守りが固められる一方で、窮屈さを感じる場面も増えている。

 ライター、ペットボトル飲料、シャンプー、練り歯磨き、整髪ジェル……。米国行きの機内に持ち込めない物品だ。

 同時多発テロ後、空港の保安検査場では、かかとの高い靴や所持する液体の検査が始まった。国土交通省の方針で今年1月から、パイロットや客室乗務員、清掃作業員、空港会社職員らにも例外なく検査が実施されるようになった。保安検査を担当する警備員も、配置につく前にまず自ら金属探知機をくぐる。

 制限区域の周りは堀が巡らされる。神戸空港と北海道の新千歳空港は、侵入車が制限区域にたどり着けないよう幅2〜3メートル、深さ50〜75センチ程度の溝を掘った。延長は神戸で1.9キロ、新千歳で1キロ。

 05年1月、国際便の乗客の個人情報を航空会社から警察庁などに送信し、不審者情報などと照合する「事前旅客情報システム」がスタート。昨年1年間で、関西空港や成田空港から入国しようとした韓国武装すり団メンバーや強盗犯ら17人の逮捕につながった。

 この2年間で全国の約2000の岸壁がフェンスで囲まれた。04年7月に施行された国際船舶・港湾保安法で、外国航路の船舶が利用する岸壁はフェンスや照明設置が義務づけられたためだ。釣りスポットが閉鎖され、肩を落とした釣り人は多い。

 ■カメラ3万台

 05年7月のロンドン地下鉄テロで、容疑者割り出しに威力を発揮したのが監視カメラ。国交省の提唱で、04年3月に約2万台だった全国の駅の監視カメラは、今年2月には3万台に増えた。国交省鉄道局は「現実にテロが起きていないことから一定の抑止効果はある」という。

 通行人の顔を撮影し、事前に入力した特定の人物と照合する「顔認証システム」の実証実験が5月、東京メトロの霞ケ関駅で行われた。要注意人物が100回改札を通れば75〜80回ヒットする程度の効果が確認された。

 主催した財団法人・運輸政策研究機構は「目を引く看板を配置し通行人が自然にカメラに向くようにするなどして、精度が向上できる」。実際の駅への導入は未定だが、「肖像権の侵害だ」と、市民団体などから反対も寄せられている。

 ■原発ピリピリ

 全国の警察が警戒警備の対象とする「重要施設」は、01年10月の約580カ所から、05年7月には約1500カ所に増えた。東京電力は福島第1、第2原発(福島県)、柏崎刈羽原発(新潟県)にレーダーを設置。不審船などの動きを警戒している。

 08年には日本で主要国首脳会議(サミット)が開かれる。警察庁の漆間巌長官は「テロリストの拠点を作らせない、テロを起こさせないことが大切だ」と話す。「国際テロリズム対策室」を新設した警察は、十数府県警に上っている。

     ◇

 〈キーワード:日本政府のテロ対策〉 国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部(本部長・内閣官房長官)が04年12月、「テロの未然防止に関する行動計画」を決定した。入国審査時の外国人の指紋採取▽スカイマーシャル(ハイジャック犯制圧目的での警察官の航空機搭乗)▽病原性微生物の管理体制確立▽核物質防護対策の強化▽空港、原発施設の対策強化▽テロ関連情報の収集▽テロリストとテロ団体の指定制度の導入など。警察庁がテロ資金の流通を防ぐ犯罪収益流通防止法案の整備を進めるなど、関係省庁が対策実施に向けた検討をしている。

http://www.asahi.com/national/update/0911/OSK200609110028.html