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2006年09月09日(土) 22時43分

「何も教えてもらえず」職場への不満供述 刑務官汚職朝日新聞

 大阪拘置所(大阪市都島区)の刑務官による汚職事件で、刑務官の桑野勝彦容疑者(37)=兵庫県宝塚市高司1丁目=が「仕事は何も教えてもらえなかったのに、ミスにつけこまれてしかられた」などと職場への不満を供述していることがわかった。同容疑者は3年前に暴力団関係者ら「処遇困難者」を収容するフロアの担当者に抜擢(ばってき)された。しかし、研修の機会も少なく、看守業務の具体的なマニュアルも整備されていないことなどから、府警は、先輩らから十分に仕事を教えてもらえなかった同容疑者が次第に職場で孤立感を深めていったことが事件の背景にあったとみている。

 大阪拘置所によると、桑野容疑者は92年4月に22歳で大阪拘置所の刑務官に採用され、04年4月に看守から主任看守に昇進した。一度の転勤もないまま、収容者の生活を指導監督する看守として勤務し続けてきた。

 捜査2課の調べでは、桑野容疑者が勤務に不満を抱くようになったのは03年秋の配置換えだった。普通は10年程度の浅い経験では担当することが珍しいとされる、「処遇困難者」を収容する「5舎4階」フロアの担当に抜擢された。約50人の収容者がおり、15分ごとに巡回して動静を把握することが主な仕事だった。

 同拘置所を所管する法務省大阪矯正管区などによると、刑務官に採用されると約半年間にわたって護身術や敬礼の仕方、関係法令を学ぶ「初等科研修」を受けるが、収容者との接し方など看守業務の具体的な方法は上司や先輩から口頭で教えられることが多く、業務マニュアルなどは作成されていないという。

 府警の調べに対し、桑野容疑者は当時の勤務について「周囲のベテラン看守たちは若い自分が担当になったことを快く思わない雰囲気が職場にあった」「仕事でミスすると、つけ込んだようにしかられた」などと供述。「処遇困難者の担当は初めてなのに、仕事を教えてもらえなかった」とも話しているという。

 桑野容疑者は不満を抱えながら、厳しく指導するべき収容者同士の会話に見て見ぬふりをしたり、独居室の扉を開けたまま収容者と雑談したりするなどしていたという。

 04年7月には、自宅の住宅ローンを抱えて経済的に苦しかった事情もあり、収容中の山口組系暴力団組長の天野洋志穂(本名・金政基)容疑者(66)の求めに応じて部屋を移すなどの便宜を図り、見返りに車を受け取り、家族旅行の費用も肩代わりさせたとされる。

 各地の拘置所や刑務所では、刑務官がひそかに収容者と外部との連絡役を引き受ける「ハト行為」などの不正が発覚するたびに、「収容者との私語を慎むように」と指導している。しかし、「私語」の定義はあいまいで、「収容者の心情の把握のため」などの理由で刑務官の裁量に任されているのが実情という。

 大阪拘置所の広報担当者は「実際の仕事の仕方は上司や先輩が口頭で伝え、あとは現場で経験を積むしかない。刑務官個人のモラルが大事だ」と話す。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200609080075.html