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2006年09月09日(土) 20時13分

なぜ「摂理」いま浸透? 「洗練されたカルト」と専門家産経新聞

 教祖による女性信者への性的暴行が問題化している宗教団体「摂理」。オウム真理教による地下鉄サリン事件以来、日本社会はカルトへの警戒を強めてきたはずだったが、摂理はその監視の目を盗み、主に大学生の間に浸透していた。教団の常軌を逸した活動がなぜ野放しにされてきたのか。専門家は「これまでにない巧妙な手口を持つ“洗練されたカルト”だ」と指摘している。

■狙い定め

 「摂理の勧誘の特徴は対象者を特定すること。狙われたらほぼ100%入信してしまいますよ」

 長年にわたり摂理信者の相談に乗ってきた日本基督教団の愛澤豊重総務幹事は、こう話す。摂理の主なターゲットは優等生タイプの大学生だ。

 現役の大学生はサリン事件が起きたころ、10歳前後。事件の現実感がなく、カルトには無防備だ。中でも、優等生たちは幼少期から塾などの習い事漬けにされているため、物事を無批判に受け入れがちだ。

 摂理は、世間ずれしていない彼らに、社会矛盾を解消し理想社会を実現する手段として教義を教え込む。受験戦争を勝ち抜いてきた優等生は向上心が強く、与えられた課題を達成すると「人間的に成長した」と評価する教義に乗せられやすい。

 愛澤総務幹事は「理想や成長が手軽に手に入る訳ないと思うべきだが、真の心の教育を受けていないから…」と入信者をかばう。

■がんじがらめ

 摂理は、サークルの勧誘などを装い、対象者に自然な形で近づく。

 先輩後輩や男女間の人間関係が苦手でサークル活動を敬遠しがちな最近の大学生は、教義上、良好な人間関係を重んじ恋愛を認めない摂理系サークルに好感を抱いてしまう。身だしなみも良く、宗教団体には見えない。さらに、信者のエリート社会人や著名人に出合え、新しい体験をさせてもくれる。

 大学時代に入信した元信者は「若者は冷めているといわれるが、物足りなさはある。そんな中で、すばらしい人たちに巡り合えたと思った」と当時の心情を吐露する。

 その裏では、頭脳明晰な幹部らが毎日のように会議を開き、対象者の性格や心理状態を分析、冷徹にマインドコントロール(洗脳)の手順を決めている。個人的な心配事の相談に乗るなどして、人間関係でがんじがらめにし、徐々に摂理を生活のすべてにしてしまう。

 「性的暴行を受けても人間関係を失いたくないので我慢してしまった。多くの信者は人間関係から抜け出せないだけ」

 元信者の女性はこう嘆息する。もちろん、教義に共鳴するあまり教祖との性的関係を拒まなかったり、教祖をアイドル視してむしろそれを喜び、優越感を感じてしまう信者がいるのも事実だ。

■秘密主義

 一方、摂理が水面下で増殖し続けることができた秘訣は、徹底した秘密主義と組織管理にある。

 摂理は洗脳が完成するまで、宗教団体であることを明かさない。教義を印刷物にしない。「家族や知人に誤解される」と口止めし、幹部がメールや電話で緊密に連絡を取って信者を管理する。

 洗脳は、「自分で決めて」などと自主性を重んじる形を取るが、高度な誘導を行っている。そのため「怪しいところがあれば抜けようと思うが、見つからないから抜けてない状態」(元信者)の信者が大半のようだ。

 また、日本では脱会者の拉致・監禁などの暴力はせず、社会問題化させない。“大人の目”をごまかすために細心の注意を払っているのだ。

 摂理脱会者を支援する渡辺博弁護士は「摂理は正体隠しが今までのカルトより徹底している。教育機関は事前に周知すべきだ」と警告している。

(09/09 20:13)

http://www.sankei.co.jp/news/060909/sha017.htm