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2006年09月09日(土) 10時06分

国選弁護拡大課題なお 日弁連シンポ・福岡 負担増、弁護士も不足西日本新聞

 刑事弁護のあり方などを話し合う日本弁護士連合会主催の「第9回国選弁護シンポジウム」が8日、福岡市中央区のアクロス福岡で開かれた。10月から国選弁護の対象が起訴前の容疑者にも一部拡大される大きな局面を迎えた中、ほぼ全面適用される2009年に向け、さらなる態勢整備など最大限の努力をしていくことを決意するアピールを採択した。各地の弁護士や市民約600人が出席。起訴前国選制度に登録する弁護士数が全国で約5400人に達し、とりあえずは始動できる状態になったことなどが報告された。また捜査機関による取り調べの様子を録画・録音する「可視化」の取り組みが進む台湾、韓国の状況も報告された。

 起訴前の容疑者にも国選弁護人をつける「被疑者(容疑者)国選弁護制度」が10月に一部始まるのを前に、福岡市で開かれた「第9回国選弁護シンポジウム」。1990年に大分、福岡で走りだした当番弁護士制度が、日本弁護士連合会(日弁連)の悲願だった起訴前の国選制の実現につながる節目を目前に控え、会場は静かな熱気に包まれた。だが同時に、なお克服すべき課題も浮き彫りになった。

   ◇   ◇

 「当番弁護士制度が新たな段階に入ったということだ」。シンポの冒頭、日弁連の平山正剛会長はこう切り出した。

 逮捕された容疑者の要望に応じ、弁護士が電話1本で駆けつける当番弁護士は、92年には全国へと広がった。

 「容疑者段階の弁護も国費で」。容疑者国選制は、日弁連が求めてきたその理念を実現するものだ。「刑事司法の歴史を変えようとしている」。平山会長は力を込めた。

 今回は殺人など重大事件に限って容疑者にも国選弁護人が選任されるが、ほぼ全面実施となる2009年には約9万件の事件に国選弁護人がつくと日弁連は推計。自白の強要など違法捜査の抑止につながるとみている。

 ただ、道のりは平たんではない。現在、国選弁護を担っている弁護士数は約1万3500人。これに対して現時点で起訴前弁護に参加する意向を示す弁護士は約5400人。09年にはさらに登録者を増やさなければ対応はできない。

 しかし負担増に加え、弁護士の選任など制度の運営を、法務省とのかかわりが深い日本司法支援センター(法テラス)が担うことに対する根深い不信感がある。

 「弁護活動の自主性、独立性が保てるのか」「運営の状況を点検し改善していく必要がある」。この日も、運営に関するこうした声が出された。

 また「苦労が多い事件を担当する弁護士が報われる報酬制度に改善するべきだ」など、国選制に伴う新しい報酬制度についての注文も相次いだ。

 これに対して日弁連執行部は「社会情勢、政治とのせめぎ合いの中で制度は動く。課題の克服に向けて最大限の努力をしていく」と述べるにとどまった。

   ◇   ◇

 今回のシンポでは、刑事弁護におけるもう1つの課題である捜査機関による取り調べの様子を録画・録音する「可視化」にも議論が及んだ。録画・録音は当番弁護士の先進地、英国で始まり、韓国や台湾でも一部で導入。日本では7月から東京地検が試験運用を始めたばかりだ。

 シンポでは、来日した韓国の警察大学教授らが実施状況を紹介。「忠実な捜査ができるようになった」「『人権侵害行為を受けた』『証言していないことを調書に書かれた』などと訴えられることが少なくなった」など、可視化によるメリットを強調した。

 聞き入る会場の中には、鹿児島県議選に絡む選挙違反事件で、強引な取り調べを受けたと訴える男性(60)もいた。

 「可視化が進めば、強引な取り調べをする捜査員は排除され、自白の強要はなくなるはずだ」と語り、日本でも早急に導入されるよう訴えた。 (社会部・重川英介)

=2006/09/09付 西日本新聞朝刊=
(西日本新聞) - 9月9日10時6分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060909-00000007-nnp-l40