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2006年09月08日(金) 00時00分

札幌の「1%制度」に賛否両論朝日新聞

 ■ 札幌の「1%制度」  「民主的手法」に賛否両論
  ——NPOは署名集め 市、導入に慎重

自分が納める個人市民税の1%分を、支援したい市民団体に提供できる「1%支援制度」について、札幌市のNPOグループが賛同の署名集めを始めた。「納税者の意思を反映した直接民主主義的な手法」と力説するが、「非納税者の意向が反映されず、民主主義に逆行する」と批判的な意見もあり、賛否は割れている。札幌市も導入には慎重だ。
 (報道部・綱島洋一)

 「1%制度は納税者の社会参加と納税意識を向上させる、新しい市民参画制度だ」
 NPO推進北海道会議などが8月に立ち上げた「1%指定制度を実現する会」(代表・田口晃北海学園大教授)は、署名活動に合わせた声明で強調した。会の名称を「支援」ではなく「指定」制度としたのは、納税者が使途を決める重要性を強調するためだ。

 NPOが制度導入に積極的なのは、深刻な活動資金不足がある。市民活動は「新しい公共」の担い手として期待されているが、市民からの寄付は思うように集まらない。

 一方、6月に市民グループの招きで札幌を訪れ、上田文雄市長らと討論した財政学者で東大大学院の神野直彦教授は、「1%支援制度は民主主義の根幹を覆す」と反対を唱える。

 「非納税者や貧しい市民は黙っていなさいとなる。税の使途は皆で決めるという共同意思決定の原則に反する」

 支援制度は千葉県市川市が、05年度に全国で初めて導入した。支援団体を指定できるのは個人市民税の納税者だけで、主婦らボランティア活動の担い手の多くが制度に参加できず不満が残った。

 神野教授は「個々の納税者の意向で税の使途を決めると、『自分の税は軍事費に使って欲しい』などの動きにもつながる」。税で市民活動を支援するならば、「議会で論議して補助金として支出すればよい」という。

 8月末、1%支援制度を取り上げたNPOのセミナーで講演した、北大公共政策大学院の宮脇淳教授は「政策には作用と副作用がある。1%支援制度の副作用を議論するだけでなく、いろいろな政策を組み合わせるのが必要だ」と話した。

 実現する会も、寄付やボランティア活動に参加できる仕組みを合わせて作り、非納税者の「不公平さ」の解消を掲げる。

 それでも札幌市は神野教授の見方に一定の理解を示し、1%制度には消極的だ。市幹部は「札幌市の個人市民税の1%は約7億円。制度が普及すれば財政負担が重くなる。税への関心を高めるのは、別の手法でするべきだ」という。

 《キーワード》
 ◆1%支援制度   札幌市の上田文雄市長が目指す「市民活動促進条例」制定に向けた「条例検討協議会」が5月、市への提言書の中で基金制度の創設とともに提唱した。市民活動を資金面で支える狙い。導入の是非については協議会でも賛否が割れ、両論併記での提案となった。

                      ◇

 ■ ハンガリーは国税対象——発祥の地 納税者の30%が利用

 1%支援制度はハンガリーが「パーセント法」として、96年に初めて導入を決めた。制度に詳しい笹川平和財団(東京)の前中欧基金事業室室長代行の茶野順子さんは、「この制度で市民が市民団体を応援するようになった」と話す。

 経済の自由化で、経済的な自立が難しくなった教会などを支えるために導入。スロバキア、リトアニア、ポーランドにも広がった。一方、米国では寄付による支援が主流で、この制度への関心は薄いという。

 市川市は個人市民税(地方税)が対象だが、ハンガリーは個人所得税(国税)。納税者の約30%が制度を利用する。

 保健衛生、福祉、子どもの教育、動物愛護など地域密着の活動をする団体が多くの支援を受けているが、茶野さんは「自らの活動が理解されて初めて支援を受けられる。1%支援制度があるからバラ色というわけではない」という。

http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000000609080005