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2006年09月06日(水) 00時00分

「塀の中」も医師不足 受刑者の持病悪化も 法務省調べ朝日新聞

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常勤医の定員が3人と定められている神戸刑務所では、あやうく5月でゼロになる寸前だった=兵庫県明石市大久保町森田で

 全国各地の刑務所や拘置所で医師不足が深刻化していることが、法務省の調べでわかった。今年8月現在、74施設(支所を除く)のうち18施設で常勤医が同省の定員に満たず、7施設ではゼロ。5月に施行された刑事施設・受刑者処遇法は「塀の中」でも一般社会と同水準の医療提供を明記しているが、持病が悪化したケースもあり、格差は大きい。

 法務省矯正局によると、刑務所や拘置所の常勤医の数はこの数年間、減少が続き、今年8月は208人と定員に18人足りなかった。一方で、医療を必要とする収容者の数は、01年の約3万3千人から、05年は約4万9千人と約1.5倍に。受刑者の高齢化などで、収容者全体に占める割合も51.5%から62.6%と10ポイント以上増えた。

 医師不足が特に深刻な札幌矯正管区では、管内7施設のうち4施設で常勤医がいない。400人以上を収容する旭川刑務所(北海道旭川市)は、4月から常勤医が不在で、非常勤医も平日は確保が難しいという。緊急時は施設外の医療機関に受刑者らを連れて行くが、受刑者1人に刑務官3人がつきっきりになるなど、職員全体の勤務にも影響している。

 2千人以上を収容し、医師の定員が3人の神戸刑務所(兵庫県明石市)でも昨年から今年にかけて常勤医が相次いで辞職し、いなくなる寸前だった。他施設からの紹介で4月末、ようやく1人の採用が決まったという。

 刑務所は医療設備が限定され、報酬も高額でないことなどから、医師に魅力的な職場には映らないとされる。各施設は大学の医局から若い医師を紹介してもらうことが多かったが、人材確保が難しくなっている。大学医学部の関係者は「04年度に始まった臨床研修制度で大学に若い研修医がいなくなり、刑務所に行き渡らない」と説明する。

 「薬をもらうだけで専門医の診察が受けられない」。NPO法人「監獄人権センター」(東京)に寄せられる受刑者や家族からの医療相談は急増。関東の刑務所に服役中のある受刑者は「医務課長に『死んでも仕方がない』と言われて悔しい」と家族に手紙を書いた後、持病が悪化して倒れ、病院で手術する事態になったという。05年度に同センターが受けた手紙は1600通。担当者は「医師の資質を疑うようなケースもあるが、刑務所側が医師に強く言えないのでは」とみる。

 法務省矯正局は「常勤医がいなくても、必要な医療を怠ることはない」と強調する。だが、同センターの海渡雄一弁護士は「貧弱な医療態勢などが原因で、適切な医療を受けられず死亡したり、病気を悪化させたりする例が後を絶たない。刑務所医療の管轄を厚生労働省に移すなど、抜本策が必要だ」と話す。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200609050063.html