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2006年09月04日(月) 00時00分

定着しない助産師 長時間勤務、残業 東京新聞

 横浜市の産科婦人科「堀病院」で、助産師資格のない看護師が内診をしていた無資格助産事件。強制捜査から十日が過ぎたが、横浜市には二百件以上の電話相談が寄せられたほか、「他の病院でも無資格助産が行われている」との情報もあり、不安は広がる。“お産のプロ”助産師の今を追った。 (横浜支局・小川慎一、中沢穣)

 「内診をお願いできませんか」。都内の一般病院で助産師として働く女性(36)は深夜、看護師に声をかけられると「あと一人、助産師がいれば楽なのにと思う」と言う。

 この病院は年間出産数約六百件で、看護職二十人のうち助産師は十四人。年間三千件の出産を助産師六人で対応していた堀病院に比べると、充実しているようにもみえる。それでも「深夜は助産師一人。妊婦さんが何人もいれば、内診をこなすのは難しい」と語る。

 助産師の仕事には、妊婦との信頼関係が重要だ。「母乳の与え方や育児指導など産後のケアも大切」なため、勤務後に病院に残る時間も長い。

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 出産の現場では、助産師不足だが、産科医不足で産科そのものや出産の取り扱いをやめる病院も増えている。「働ける場所は意外に少ない」というのが助産師の実感だ。

 「助産師を補助的な存在と考え、お産の取り上げを任せようとしない病院は多い」と、日本赤十字社助産師学校(東京都渋谷区)の森谷美智子教務部長は指摘する。

 堀病院では「医師がお産を診るのが患者サービス」(堀健一院長)という方針があり、助産師は出産に関与できなかったという。このため「やりがいが感じられない」と就職を断念したり、数カ月で退職したりする助産師も多かったとされる。

 三つの病院で勤務した経験のある助産師(41)は「出産の取り上げまで看護師にやらせている病院や診療所は多い」と打ち明ける。「万が一の時に助産師の責任にされる怖さがある」ため、こうした病院での勤務は敬遠されているという。

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 “自然な出産”を望む女性が増え、助産院や自宅に出張する開業助産師の役割が見直されつつある。だが、産科医不足の影響は、開業にも打撃を与えている。

 助産師の開業には医療法の規定で、異常出産時に妊婦を受け入れてくれる嘱託医が必要だ。今年成立した改正医療法(二〇〇七年施行)では、お産の安全性を高めるため、嘱託医は産婦人科医に限定され、緊急時に搬送できる連携医療機関も義務化されている。

 首都圏の出張助産師(46)は「これまでも『助産所のお産は危険』と医師に断られることが多かったが、法改正で開業がより難しくなる」と不満をぶつけ、こう指摘した。

 「資格を持ちながら働いていない助産師は約二万九千人もいる。行政はそうした人たちが開業でも働けるように、医師を紹介するシステムをつくるべきだ」


<メモ> 助産師
 国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けた女性。保健師助産師看護師法(保助看法)の規定で、正常分娩なら医師の監督なしで出産を介助できる。2004年に働いていた助産師は約2万6千人。看護師・准看護師は約115万人。神奈川県警は8月24日、出産前の内診を無資格の看護師らに行わせていたとして保助看法違反の疑いで「堀病院」を家宅捜索した。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060904/mng_____kakushin001.shtml