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2006年09月02日(土) 00時00分

(46)新旧信仰、静かに共存 天理朝日新聞

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灯籠に明かりがともるころ、ニワトリが境内に集まってきた=奈良県天理市の石上神宮で

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商店街のアーケードで祈りをささげる天理教の信者。天理ではこんな風景とよく出合う=奈良県天理市で

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天理教施設が一望

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天理ラーメンの老舗、彩華ラーメン

 うっそうとした杉木立の境内には荘厳な雰囲気が漂う。奈良県天理市にある石上(いそのかみ)神宮。あたりをヒグラシの合唱が包み込み、灯籠(とうろう)に灯が入った午後6時過ぎ、放し飼いになったニワトリたちが集まってきた。何度か樹木を見上げると、「えいっ」とばかりに低い枝に飛びつく。枝から枝へ、羽をばたつかせて登り詰めると、夜明けでもないのに「コケコッコー」と鳴いた。

 古事記や日本書紀にも登場する由緒ある神社。ニワトリにもいわれがあるのではと尋ねると、「前の宮司が参拝客の少ない時期に『にぎわし』にと飼い始めたのですよ」と神職。新参者なのに、しっかり境内に溶け込み、今では「ニワトリの神社」としても親しまれている。

 参道を下っていくと、眼下に市街地が広がり、ビルに瓦屋根をふいた不思議な建物群が目に飛び込んできた。街中に響く太鼓の音とともに、中心に立つ天理教教会本部で「夕づとめ」が始まる。3157畳敷きの礼拝場(らいはいじょう)に、仕事や学校帰りの信者たちが続々と集まり、拍子木や鉦(かね)の音と独特の節回しの歌に合わせて両手を動かしながら、一日の感謝をささげていた。

 日本で唯一宗教団体の名前を冠した天理市。ここでは新旧の宗教が、青垣の山のふもとで静かに共存していた。

■歴史が育てた懐深さ

 天理の町でまず目につくのが「ようこそお帰り」と書かれた看板。天理教では教会本部の神殿の中心地を人類創造の地「ぢば(地場)」と呼ぶ。すべての人間のふるさとだから「ようこそ」と同時に「お帰り」となる。

 町を歩けば黒い法被(はっぴ)を着た人々と出会う。背中に「天理教」、襟に「修養科生」の文字。全国、そして海外から来た信者たちだ。通りでごみ拾いの奉仕をしたり、教祖殿に向かって祈りをささげたりする姿が見られる。いたる所にある鉄筋ビルに瓦屋根の建物は、各地の信者たちが寝泊まりする「詰所(つめしょ)」や教団の病院だ。初めてこの町に来ると、まるで外国にいるような錯覚に陥るが、町の人にとっては当たり前の風景だという。

 幕末にこの地に生まれた天理教だが、近年は天理教とともに町も発展してきたともいえる。

 信者の娘として生まれ、教団の病院や学校で看護師として働いてきた松井文子さん(61)は、天理の魅力を「聖地であるおぢばと、大和時代からの長い歴史にある」という。中学校の時に万葉集を学んで大和の魅力にとりつかれ、一帯の社寺の仏像や境内の古木を訪ね歩くのが趣味になった。元旦には教会本部でお祈りしたあと石上(いそのかみ)神宮にも立ち寄る。「ほかの宗教に敬意を払いなさいと教祖(おやさま)も教えていますから」と屈託がない。

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 天理の東部、青垣の山すそに続く山の辺の道。沿道に連なる神社仏閣や遺跡に古代のロマンを求めてやってくる観光客と、聖地を目指して集う信者たち。二つの人の波が町を潤してきたが、最近は陰りも見える。

 例えば天理教の夏の恒例行事「こどもおぢばがえり」。7月26日から約10日間、全国から集まる信者の子どもたちでにぎわうが、ピーク時に40万人近くにのぼった参加者は最近では30万人を割りこむ。立教の日にちなむ毎月26日の月次祭(つきなみさい)の参拝者も減っている。加えて、郊外の大型店に押され、シャッターを下ろす店が商店街に目立ってきた。

 そんな町に活気を取り戻そうと昨秋、「よさこいソーラン」系のお祭り「天理な祭り」が始まった。

    ◇

 「ヨーイソーレドンドンドン。心ひとつに、さあ踊れ」

 町の体育館で、祭りのオフィシャルソングに合わせ、ダンス好きの市民でつくる「山の辺ドリームス」の約40人が、17日の本番に向け練習に励んでいた。

 柿本人麻呂が石上を舞台に詠んだ万葉歌「娘子(をとめ)らが袖(そで)布留山(ふるやま)の瑞垣(みづかき)の……」をモチーフにした歌詞には、「おぢばの里」「陽気(ようき)ぐらし」など天理教用語もちりばめられている。祭りは青年会議所などでつくる実行委員会が仕切るが、主催は天理市だ。「特定の宗教団体の色がついていいのか」との異論もあったが、「天理教も含めて天理の町だから」と採用された。

 「ここで育った人間には天理教は水や空気みたいなもの。石上のことだって入っているしね」と、実行委員長の足達保樹さん(39)が笑った。

 宗教への寛容さは、この町の豊かな歴史が産んだ懐の深さなのかもしれない。ふと石上神宮のニワトリの姿が浮かんだ。

<アクセス>

 天理教教会本部はJR桜井線・近鉄天理線天理駅から徒歩約15分。さらに10分で石上神宮。

<キーワード>

 【天理教】教祖は現在の天理市三昧田町に生まれた中山みき。1838年10月26日、神の啓示を受けて神がかりとなったと伝えられ、その日を立教の日とする。戦前、戦中には国からひどい迫害も受けた。教義では神が「ぢば」(神殿のある場所)で人間を造ったとされる。ぢばを囲む8町(870メートル)四方に、瓦屋根をふいた鉄筋ビル群を建て巡らす計画が町並みを独特のものにしている。祭儀には鉦(かね)や太鼓などの鳴り物が用いられ、歌と手ぶりがつくのが特徴だ。

<味な逸品>

 天理といえばスタミナラーメンだろう。ピリ辛スープに、たっぷり入った白菜、ニラ、ニンジンなどのいため野菜が特徴だ。

 しにせのひとつ「彩華」(本社・天理市)は68年、天理教教会本部近くに開いた屋台からはじまった。現在直営、フランチャイズ合わせ13店舗に広がり大阪、兵庫、岡山、北海道にも出店している。

 食欲をそそるニンニクの香りを漂わせて、基本の「サイカラーメン」が運ばれてきた。白菜のシャキシャキ感と、ほどよい硬さにゆで上がったメンの二つの食感が楽しめる。メンは細メンだ。サイズは小、大、特大の3種類。小がめんひと玉の普通サイズで「少なめ」という意味ではないので要注意。大はふた玉、特大は3玉もある。同社の小笠原義信・統括部長によると、特大は、天理大の運動部の学生たちへのサービスとして始まったそうだ。

 営業時間やメニュー、値段は店によって若干異なる。同社のホームページには店舗情報も。

http://www.asahi.com/kansai/fuukei2/OSK200609020027.html