2006年08月31日(木) 15時09分

WSJ-ディラー氏、IACをネット業界他社と戦える企業への変身狙う（ダウ・ジョーンズ）

ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)バリー・ディラー氏と言えば、70年代から80年代にかけてのハリウッドやテレビの世界で、アメリカ人の娯楽の好みに対する判断が的確だということで伝説になった人物だ。

同氏はこれまでの10年間、件数で100件、金額で200億ドルを超える取引を重ねて、ごたまぜのインターネット企業、IAC/インタラクティブコープ(Nasdaq:IACI)を作り上げた。

しかし、他のインターネット企業が市場の注目を集めるのに対し、IACには風が吹かない。金融サイトのレンディング・トゥリーのような成功した例もあるが、旅行サイトのホットワイア・ドット・コムのような失敗サイトもある。

IACがインターネット検索など広告収入を主とする事業に、改めて注目し始めたことを適切な動きだと感じる投資家もいる。IACのインターネット事業は最近までは、旅行事業など取引を主体とするビジネスに取組んできた。IACは昨年、米オンライン旅行代理店部門のエクスペディア(Nasdaq:EXPE)を分離独立させた。同時に17億ドルを投じインターネット検索サイトのアスク・ジーブズ・ドット・コムを買収し、アスク・ドット・コムと名称を変更した。IACは広告収入を主とするアスクを事業の柱にする戦略だ。

ディラー氏は、インターネット事業への戦略を変えていることを認めている。IACにはいつでも使える資金が11億ドルある。

ディラー氏の方針がうまくいけば、IACの株は魅力的で「バイ」だ。IACの株価はここ2年間、20−30ドル台で動いているが、2003年につけた高値、47ドルには遠く及ばない。時価総額はおよそ95億ドルだ。

IACのPERは、2007年予想利益に対して16.7倍だが、これはメリルリンチによるとS&P500種指数採用銘柄より少しいいくらいで、これに対しグーグル(Nasdaq:GOOG)は30.7倍、ヤフー(Nasdaq:YHOO)は35.8倍だ。

確かに、この時点ではIACは、この２社の成功をまねすることができるだけだ。コムスコア・ネットワークスの調査によると、アスクの市場シェアは5.4％で市場５位。市場シェアはグーグルが43.7％、ヤフーが28.8％だ。

IACには小売り部門の問題がある。この部門には通信販売やインターネット販売のHSNやコーナーストーン・ブランズなどがある。この部門は2005年の売上高全体の53％、営業利益全体の43％を占めた。しかし、４−６月期（2006年12月期第２四半期）のこの部門の売上高増加率は２％にとどまった。IACは今年、この部門のCEOを更迭している。さらに、米メディア企業大手EWスクリップス(NYSE:SSP)が最近、傘下のホーム・ショッピング・ネットワーク部門を閉鎖したことを考慮すると、顧客のテレビ・ショッピング離れが進んでいるのかもしれない。

しかし、ディラー氏には固定的についている投資家グループがついている。これら投資家は、ディラー氏が高成長の可能性がある企業を集積し、経営上の欠点を修正していると考えている。投資家はIACが４−６月期に利益を増加させたことで強気だ。

IACは４−６月期決算の発表後、市場では他のインターネット銘柄を売上高が良くなかったとして売られているにもかかわらず、21％上昇した。IACの30日終値は、前日比２セント（0.1％）高の28.59ドルとなった。

ディラー氏は過去に、多くの投資家にもうけさせてきた。パラマウント・ピクチャーズで責任者を務めた時には、「サタデー・ナイト・フィーバー」などの大型ヒット作を作り会社を建て直した。80年代後半になると、フォックス・テレビジョン・ネットワークの創設に関与した。

ディラー氏の電子商取引に対する興味は90年代初期にさかのぼる。当時ディラー氏は、ホームショッピング・チャンネルのQVCで会長を務めていた。後に同氏はホーム・ショッピング・ネットワーク、後のHSNと、コンサートやスポーツなどのエベントとチケット販売をするチケットマスターの経営権を握る。のちにシティーサーチへの投資によって、初めて純粋なインターネットへの投資を始めた。

IACの戦略は、インターネットで変容が進む事業に初期に参入する作戦をとってきた。しかし、これまでのところディラー氏はインターネットの世界ではヒットを飛ばしていない。SNSの「マイ・スペース」や「フェースブック」では創業時のチャンスを逃した。また、エクスペディアやホテルズ・ドット・コムの買収は当初、賢明な投資とみえたが、後には競争激化から問題が生じた。

（8月31日付Heard On The Streetより）

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060831-00000024-dwj-biz