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2006年08月31日(木) 09時58分

国、製薬会社に賠償 原告側「大きな一歩」 薬害肝炎九州訴訟産経新聞

 血液製剤投与でC型肝炎になったのは国と製薬会社に責任があるとして、約1億6800万円の賠償を命じた「薬害肝炎九州訴訟第1陣」の福岡地裁判決で30日、須田啓之裁判長は「昭和55年11月以降に投与された原告に対し、国と会社は賠償責任がある」と6月の大阪地裁判決に続き、国と製薬会社の責任を認め、賠償の有無を左右する投与時期を大阪地裁判決より約5年さかのぼるなど、幅広い救済を求めた。

 勝訴したのは原告18人のうち11人。須田裁判長は「血液製剤フィブリノゲンは肝炎感染の危険性から米国で承認が取り消されたことが昭和53年に公示され、その効能についても研究者の間では疑問視されていた」と指摘。「国と企業は遅くとも55年11月までに投与対象や製造、承認を限定すべきだったのに怠った」と述べた。

 一方で原告3人には、投与時期が同月以前か、投与の証拠不足として、請求を棄却。別の血液製剤クリスマシンを投与された原告4人にも「クリスマシンは医薬品としての有効性、有用性があった」と訴えを退けた。

 国と製薬会社側は「フィブリノゲンは医療現場で評価され、原告らが投与を受けた各時点では医薬品として有用性があった」と主張していた。

 大阪地裁判決は、青森県の産婦人科でフィブリノゲンによる集団感染が発覚した昭和62年4月以降、国は血液製剤の危険性を認識していたはずで、製造規制すべき義務があったと認定。製薬会社には、製薬工程で効果のない感染対策を取り始めた60年8月時点から、患者への賠償義務が発生したとの判断を示した。

≪厚労省「厳しい判決」 「大きな一歩」原告側≫

 全国5地裁で係争中の薬害C型肝炎訴訟で、30日の福岡地裁判決は、6月21日の大阪地裁判決に続いて国と企業の責任を認め、救済範囲を拡大させた。“連敗”を喫した厚生労働省の幹部は「裁判所の判断が誤っている…」と強気の姿勢だが、原告有利の判断が流れとなるなか、国はさらなる患者救済策の検討を突きつけられている。

 この日の福岡地裁判決は米国食品医薬品局(FDA)がフィブリノゲン製剤の承認取り消しを公示した昭和53年までさかのぼり、国の責任を指摘するなど大阪地裁の判決より厳しい内容。訴訟を受け持つ厚労省医薬品副作用被害対策室には「本当に厳しい判決」と再び衝撃が広がった。

 幹部職員は「当時の米国の製剤には日本ほど有効なウイルスの不活性化処理がなされていなかった。単に米国の承認取り消しを日本にあてはめるのは誤っている」と漏らし「(大阪と福岡の)2判決には食い違いもある。(今後)国に違法性はないという判断もありうる」と語った。

 一方の原告側の表情も複雑。会心の笑顔で勝訴に沸く光景もみられたが、原告7人は請求棄却。顔を曇らせ涙を見せたり、足早に法廷を後にした原告も。薬害肝炎訴訟の全国原告団代表の山口美智子さん(50)は明暗分かれる判断に「ここで止まってはいられない」と宙を見上げた。「大きな一歩ととらえ、壁を乗り越えたい」と誓う声も聞かれた。

【用語解説】 薬害肝炎九州訴訟

 汚染血液製剤の投与でC型肝炎になったとして、福岡、熊本、沖縄の計10人が平成15年4月、国と製薬会社2社に損害賠償を求め提訴した訴訟。追加提訴があり、30日現在の原告は36人。第1陣判決は18人が対象で、旧ミドリ十字が製造したフィブリノゲンやクリスマシンを投与され、慢性肝炎や肝硬変になったと主張した。うち1人は母体内感染。同様の訴訟は仙台、東京、名古屋、大阪の4地裁でも起こされ、福岡を含めた原告総数は127人。製薬会社はフィブリノゲンによる感染者が昭和55年以降、国内に約1万人いると推定している。

【2006/08/31 東京朝刊から】

(08/31 09:58)

http://www.sankei.co.jp/news/060831/sha032.htm