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2006年08月26日(土) 00時00分

聖地アキバで 巫女プチ体験読売新聞

神社側いたってマジメ 尼僧も静かな人気

正座でしびれた足をほぐす「巫女さん体験講座」の参加者たち(東京・神田明神で)

 黒髪に袴(はかま)、袈裟(けさ)に数珠。気品と神秘性が漂う巫女(みこ)や尼をプチ体験できる講座が、若い女性の人気を呼んでいる。アニメやゲームでの「萌(も)えキャラ」人気と無縁ではないようだが、講座内容は至ってマジメ。彼女たちを突き動かすものは、コスプレ感覚だけなのだろうか——?

 「高天原(たかまのはら)に神留(かむづま)り坐(ま)す……」

 白の小袖に緋(ひ)色の袴を身につけて正座する23人の“巫女”が、祝詞の書かれた紙を目の前にかかげ、声を振り絞る。始まって40分以上。足がしびれ、腕は小刻みにふるえ始めた。「背筋を伸ばしてっ」。時折、禰宜(ねぎ)のしっ責が飛ぶ。

 東京・秋葉原の氏神「神田明神」で今月17日に開かれた「巫女さん体験講座」。袴の着方から、神社の歴史、礼儀作法までたたき込まれる。

 「足を崩して良し」。その瞬間、悲鳴に似たため息が漏れた。立ち上がろうとして、その場にへたり込んだ東京家政学院高校2年の野部晶代さん(16)は「袴姿になりたくて参加したけど……」と足を伸ばしながら苦笑い。小山台高校2年の高橋美舞さん(16)も「同じ姿勢を続けるのは、すごく体力がいる」と汗をぬぐった。

 茶髪、マニキュア、ピアスは禁止、携帯電話も持ち込めない。応募時には志望書を、終了後は感想文を提出——。かなり厳しい条件をつけたが、定員の倍以上の52人から応募があった。

 講座は2年目。きっかけは、数年前、同神社の清水祥彦禰宜(46)が秋葉原で巫女のコスプレ姿の女性たちを目にしたこと。「正しい姿を伝えなくては」と決意したという。

 巫女人気は、1990年代に入り、アニメ「美少女戦士セーラームーン」やゲーム「サクラ大戦」などに和装のキャラクターが登場し、火がついた。

 巫女風装束のネット販売も大盛況で、伝統装束の老舗メーカー「斎藤専商店」(京都市)にも数年前からコスプレ目的とみられる個人注文が舞い込むように。

 正月は従業員の半数を巫女姿にするという秋葉原のメードカフェ「@home cafeドンキ店」の尾崎太為店長(29)も、「巫女は清純な日本女性のイメージで男女を問わず人気」と話す。

 コアなコスプレーヤーだけにとどまらず、ファッション誌を愛読するような一般女性にも人気は広がってきた。

 年末年始に巫女バイトを雇う石川県の気多(けた)神社では毎年、雑誌「CanCam(キャンキャン)」に広告を出す。昨年は50人の定員に約1000人が応募した。ネット上でも、巫女バイトの情報交換や、巫女の歴史や神楽の解説など、コスプレとは一線を画したサイトも数多く登場している。


大日如来を写し取る「写仏」に取り組む一日尼僧修行の参加者(京都・笠原寺で)

 仏教の世界も、尼僧人気で沸いている。

 京都市の笠原寺(りゅうげんじ)で80年から月2回行われてきた「一日尼僧修行」。カミソリを3回頭にあてる「おかみそり」、大日如来を紙に写し取る「写仏」などを体験できる修行の参加者は、当初、大半が深刻な悩みを抱えた女性で、年齢層も50、60代が中心だったが、数年前から20、30代の女性が増え始めた。かつては参加者が集まらずに中止になることも多かったが、最近は毎回、定員の10人近くが埋まる。

 「尼僧姿にあこがれて」参加したという京都府八幡市のフリーター大杉麻紀さん(32)は「日本人に生まれたのだから伝統に触れてみたい。舞妓(まいこ)さんも体験したい」と笑った。

 やはり尼僧体験ができる信貴山玉蔵院(しぎさんぎょくぞういん)(奈良県平群(へぐり)町)や円満院門跡(えんまんいんもんぜき)(大津市)でも、同様の傾向があるという。

 なぜ今、巫女や尼僧なのか。

 2000年8月にネット上にホームページを立ち上げ、月に700件以上のメールを受ける浄土真宗の女性僧侶・川村妙慶さん(41)(京都市)は「アニメやゲームなどで尼僧や巫女を目にする機会が増え、これまで敷居が高かった寺や神社が身近になったのではないか。仏教の良さを広める僧侶の立場からするとありがたいこと」と話している。

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