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2006年08月07日(月) 22時51分

著作権問題でさまざまな業界と対立するグーグルCNET Japan

 1970年代にダラスのある成人映画専門の映画館が、映画「グリーンドア」の海賊版を上映する権利を主張した。この映画はわいせつ度が非常に高く、合法的な著作権保護は不可能だから、というのが主張の根拠だった。

 「グリーンドア」はMarilyn Chambers主演で、当時としては斬新な異人種間セックスのシーンを盛り込んでいた。連邦控訴裁判所は、このような内容の映画でも連邦著作権法によって完全に保護されるとの裁定を下し、映画館側は敗訴した。

 この映画館がひねり出した奇妙な理屈が、最近Googleによって繰り返された。人気の画像検索機能が女性のヌード写真のサムネールを表示しているのは著作権法違反だとして訴えられた裁判で、Googleは抗弁の際に同様の理屈を持ち込んだのだ。同社は、これらの写真は主に「性的満足」を目的としたものなので、著作権による完全な保護を享受できるほど十分に「創造的」でない、と主張した。連邦裁判所は2006年2月、 Googleの主張を退けている

 この訴訟はたまたま起きたわけではなく、昨今のGoogleの大きな動きに関係がある。Googleは、書籍や動画への関心を深め、検索領域をウェブページから拡大するにしたがって、 出版社やジャーナリスト、プロの写真家などを含む、著作権に関わる既存の業界との対立を強めている 。さらに、Googleのキーワード広告は複数の商標保有者を敵に回している。ただし、同社は商標権をめぐる訴訟で、2004年12月に 保険会社Geicoに勝訴した

 「これは、絶対性を求めるGoogleの手法の一環だ」と語るのは、Googleのニュース検索機能が著作権を侵害しているとしてAgence France-Presse(AFP)が提訴した裁判でAFPの代理人を務める、弁護士のJoshua Kaufman氏だ。「彼らは、ちょっとでも譲歩すると坂道を転げ落ちると恐れているのではないか。全面的な勝利か、さもなくば全敗、というわけだ」(Kaufman氏)

 著作権保有者とインターネット企業との対立には、避けようがないものもある。検索エンジン運営企業は、ウェブ上の写真や動画やテキストを、使用料を支払うことなくインデックス化し、分類し、検索結果に表示したいと考えている。一方で著作権保有者は、保有するコンテンツでより多く収入を得たいと望んでいる。

 なかには友好的に決着するケースもある。Associated Pressは同通信社のニュース記事と写真の利用をめぐってGoogleと対立していたが、米国時間8月2日、 Googleが同通信社に対価を支払うことで合意したと発表した

 Google側は、自分たちは著作権を尊重していると話し、著作権保有者は自らのコンテンツがGoogleの検索結果に加えられないようオプトアウトできる、と指摘している。しかし、著作権保有者側は、権利を持つ何百万人もの人が多数の検索エンジンでオプトアウトするというのは非現実的な話だと話す。それでもGoogle側は、同社の想定は妥当なものだと述べている。

 Googleの弁護士であるAlexander Macgillivray氏は、「保護すべき著作権をGoogle自身がたくさん抱えており、それを保護するうえで著作権法が重要だということを、人々はつい忘れてしまうようだ」と語る。「Googleは現実の検索エンジンであり、創作者の多大な影響の下でのみ存在するということを、われわれは自覚している」

 最近、自作の 短編小説集 を公開しているネバダ州のBlake Field氏が、Googleを訴えた。Field氏の主張は、自身の小説が、明確な許可を得ることなく不法に キャッシュ の形で提供されているというものだ。

 これに対しGoogleの弁護団は、Field氏の小説は最大限の著作権保護を受けるべきものだろうかと疑問を呈した。Field氏の小説は「創造性が最小限度の作品」であり、Field氏による「単なるとりとめのない話」でしかなく、「格別の保護に値するものでないことは間違いない」とGoogle側は述べている。また、Field氏はそれらの小説を書くのに「3日しかかかっていない」と、Googleの弁護団は付け加えている。ヌード写真は「現実をそのままとらえたもの」か

 Googleがこのような主張をしたのは、訴訟の進行上、必要に迫られたためという面がかなり大きい。 フェアユース(公正使用) かどうかを分析するにあたって、裁判官は著作権を有する作品の「性質」も考慮して判断する。また、重要な作品、特に未発表のものの場合、著作権保有者の利益になるように決定が動く。

 「フェアユースだとして、普通よりも多くの保護をField氏に与える根拠となるような推定を、裁判官が行わないことを願った」と、Macgillivray氏は話す。

 Googleは現在進行中の、アダルトサイト「Perfect 10」との訴訟でも同様の主張をしている。Perfect 10は「写真が現実をとらえているという性質」をほのめかしているだけで、サイトに掲載されている高品質のヌード画像は特に創造的なものではないというのだ。

 通常はGoogleに好意的な著作権研究者や、ハイテク業界からも、これはちょっと行き過ぎだという声が上がっている。

 「 Digital Copyright 」の著者であるミシガン大学ロースクールの Jessica Litman氏 は、ヌード画像をめぐるGoogleの主張を「ばかげている」と評した。

 米連邦地裁のA. Howard Matz裁判官は、「(Perfect 10の)写真は、プロフェッショナルで熟練した、時に品位を感じさせる芸術性を一貫して反映している。写真が露出度の高い--あるいはヌードの--女性を撮影したものだということはまったく問題ではない。『 ミロのビーナス 』の時代以前から、そうしたイメージは芸術家の好んで取り上げる主題だ」と踏み込んだ発言をしている。

 Googleは7月に提出した 上訴書類(PDF) のなかで、この議論を改めて取り上げようとはしなかった。

 しかしLitman氏によると、こうした訴訟はGoogleにとって「大きな賭け」だという。「フェアユースに関してGoogleが間違っているということになれば、おそらく事業を続けていけないだろう」と同氏は話す。

 Googleほどの成功を収めたとなれば、どんな企業も、うるさい訴訟に悩まされることになる。そうした訴訟をしかけてくる相手の中には、とにかく訴訟で大金をせしめることが狙いの、「コピーライトトロール(copyright troll)」と呼ばれる人々もいる。ペンシルベニア州では、あるウェブ制作者が、「ユーズネット」(ニューズグループ)への自分の投稿をGoogleがインデックス化したことは許容できないとしてGoogleを訴えるという、 奇妙な訴訟 があった。また、短編小説に関するネバダ州の訴訟で原告となったField氏は弁護士で、Googleのオプトアウトを故意に利用せず訴訟を起こした。

 そして、複雑な著作権の問題をめぐって対決する弁護士たちは、万が一に備えて、たとえ論拠が弱いものであっても、大量の主張を提出書類に盛り込みたい誘惑に駆られがちだ。

 Mitchell Silberberg & Knuppのパートナーで、Googleとの訴訟でPerfect 10の代理人を務める弁護士の Russell Frackman氏 は、「写真はおとなしいがアダルト雑誌だと言って攻撃したいのだ」と話している。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ

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[CNET Japan]
http://japan.cnet.com/
(CNET Japan) - 8月7日22時51分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060807-00000009-cnet-sci