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2006年07月01日(土) 00時00分

落語、浪曲、講談にジャズ、ロック読売新聞

“話・洋”折衷 ノリノリです

 落語、浪曲、講談といった日本の話芸と、ジャズやロックなどの洋楽を融合させて演じる試みが広がっている。新たな風を入れた伝統芸。はてさて、どう変身しますか——。


「応挙の幽霊画」を演じる講談師の宝井琴梅さん(右)、ジャズピアニストの森下滋さん

 パン、パン、パーン。

 6月22日夜、東京・四谷のライブハウス。浴衣姿の講談師宝井琴梅さん(64)が振り下ろす張り扇が小気味よく響く。ジャズピアニスト森下滋さん(30)が即興でジャ、ジャーンとピアノで反応した。名付けて「ジャズ講談」。この日は「応挙の幽霊画」など2席を演じた。

 講談師はふつう、「釈台」と呼ばれる小机を前に正座するが、ここでは「客席まで自由に歩きたい」と立ったまま。人が絶命する恐ろしいシーンで、ピアノがあえて2ビートの明るいメロディーを奏でたりもする。聴衆の横浜市の男性会社員(55)は「舌と指のバトルだね」と丁々発止の演奏に聴き入っていた。

 琴梅さんと森下さんの出会いは約3年前。共通の知人から共演を提案された琴梅さんは「ジャズは聴いたこともない」と一度は断った。しかし、手合わせしてみると、「断然、スリリング。同じ噺(はなし)でも毎回全く違った雰囲気になるし、ピアノの音に触発されて気持ちが高揚する」とのめり込んだ。

 この日、ニューヨークでの公演から帰国したばかりの森下さんも「師匠とセッションすると、自分のルーツが日本人だということに気付かされます」と話す。2人は2か月に1度、ジャズ講談の会を開いている。


ギターの演奏者とともに、三味線を弾きながら歌う国本武春さん(左)

 23日夜には、浪曲師、国本武春さん(45)が東京・有楽町でライブを開いた。

 ジーンズにシャツ、ベスト姿。自ら三味線をかきならし、「♪—鮒(ふな)じゃ、鮒じゃ、鮒ザムライじゃぁ〜」とうなり出した。

 わきに置かれた湯飲み台には、茶わんの代わりにドラムやパーカッションの音が出るリズムマシン。その軽快なテンポに乗り、忠臣蔵の「松の廊下」のシーンを描いた一節を、時にはたたみかけるようなロック調、時にはしっとりとしたバラード調で歌う。客席から「たっぷり!」「名調子!」と声がかかった。

 ギタリストも従え、ロックのほかにもカントリー、ブルースと何でもありのステージ。浪曲としては型破りに見えるが、武春さんは「三味線を使い、物語を歌えば、それは浪曲」と言い切る。披露した曲も「敬老ロックンロール」「ことわざづくし」など、浪曲が歌い継いできた日本人の知恵や道徳を織り込んだものだった。

 文化庁派遣の文化交流使として2003年9月から1年間、米国に滞在した武春さんは、現地の大学でカントリー音楽を学び、バンド活動もしてきた。「僕は死ぬまで浪曲をやる。多くの“引き出し”を持っていたい」と、ジャンルを超えた武者修行の理由を話す。

 伝統芸と洋楽の結びつきは、特に落語の世界で進む。芸歴50年の川柳川柳(かわやなぎせんりゅう)さん(75)は、自作の中で、トランペットやベースなどの音をまね、ジャズを口で演奏する。柳家花緑さん(34)も、クラシックを自らピアノで弾きつつ落語を演じるCDを作った。


山下洋輔さん

 じゅげむじゅげむ五劫(ごこう)のすり切れ……。落語に出てくる長い名前のリズムを使ったジャズ曲「寿限無」を作ったのは、ジャズピアニスト山下洋輔さん(64)だ。

 大の落語ファン。春風亭小朝さんや柳家小三治さんらと、演奏と落語のかけ合いをしたこともある。「八っつぁんや熊さん、与太郎は、ジャズマンの生きざまにそっくり。チャーリー・パーカーとか、アルバート・アイラーとか」と笑う。

 落語などと洋楽を結びつける試みについて、演芸情報誌「東京かわら版」の佐藤友美編集長(34)は「伝統芸は、時代ごとの流行を貪欲(どんよく)に吸収してきたからこそ生き残ってきた。色々な試行錯誤から、未来の古典が生まれるのでは」と期待を込める。

 ただし、落語を収録したCDを長年手がけてきたプロデューサーの京須偕充(ともみつ)さん(63)は、「芸がしっかりしないまま“逃げの戦法”として音楽を取り入れると、大やけどしかねない」とクギをさすことも忘れない。

洋楽を取り入れている落語家 川柳川柳口ラッパで「聖者の行進」などジャズのフレーズを。ジャズバンドとも共演 柳家花緑ピアノ演奏と落語を同時に収録したCDを制作 柳家喬太郎プッチーニのオペラ「トスカ」と同じ原作の落語「錦の舞衣」を口演、落語の合間にオペラ歌手が歌を披露 林家しゅう平宝塚歌劇団の曲を歌う創作落語 三遊亭亜郎元劇団四季メンバー。ミュージカル落語「オペラ座の怪人」を15日の大銀座落語祭で披露の予定

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