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2006年06月22日(木) 00時00分

投与時期で大阪訴訟明暗  薬害肝炎 国に責任 東京新聞

 薬害肝炎訴訟の初の司法判断となった二十一日の大阪地裁判決。国や製薬会社の責任を認めたものの、原告の一部は敗訴し、明暗が分かれた。同様の集団訴訟は東京や福岡などでも起こされている。東京地裁では今夏には結審、早ければ年内の判決が予想される。「原告全員の救済を」「肝炎対策にもっと力を入れて」。原告らは強く訴える。C型肝炎ウイルスに感染している人は百五十万人以上と推定され、判決を機に、国の積極的な肝炎対策を望む声も高まっている。 (社会部・大沢令)

 「C型肝炎ウイルスに感染しています」。東京地裁の原告で、都内の大学に通う男性(20)が医師からこう告げられたのは高校一年の夏。「自分のことなのに、人ごとのような違和感があった」。告知された時の心境を振り返る。

 「クリスマシン 4ミリリットル」。一九八五年、出生。産婦人科の看護記録に、第九因子製剤投与の記載があった。理由は明記されていないが、カルテからは出血があったことがうかがわれた。

 慢性肝炎で三カ月に一度、血液検査をしている。インターフェロン治療は血液のタイプから効果があまり期待できない。副作用も気になる。

 大学三年で就職活動も視野に入ってきた。しかし、将来への不安は消えない。病気の進行や差別、偏見…。履歴書に病歴を書き込むことには抵抗がある。「でも将来、入院治療になったら、隠せるかどうか」。胸中は揺れ、悩む。

 大阪地裁判決がクリスマシン投与に国などの責任は認めなかったことには戸惑いを隠さない。「ただ、国の責任は一部認められた。この機会に、肝炎対策にもっと力を入れてほしい」と注文を付けた。

 関東地方在住の五十代の女性は、二男の出産時に大量出血。止血剤として血液製剤のフィブリノゲンを投与された。

 慢性肝炎と診断されたが約四年前、肝機能数値が上がり、正常値の約十倍に。昨年九月には腎臓病も見つかった。

 二年前、病気を支え続けた夫が家を出た。生計を維持するため、今年三月から仕事に復帰。勤め先を変え、病気のことは隠して都内でレジ係のパートをしている。

 母子家庭の医療費助成を受けているが、二男が高校を卒業する来春からは自己負担になる。治療代のため、病身で働かなければならない。インターフェロンは治療代が高く、副作用も心配だ。

 「何年も、何十年も(肝機能の値に)おびえて過ごす毎日が想像できますか」。二〇〇三年に提訴。東京地裁の法廷でこう訴えた。「(製薬会社や国は)貧しいながらも幸せだった私たちの家族を返してほしい」

 今回の判決には「全員の救済ではなかったことは残念」と話した。

■治療費助成制度に遅れ

 厚生労働省によると、C型肝炎ウイルスに潜在的に感染している人は推定で百五十万人以上に上る。血液中のウイルスによって感染し、慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進行する恐れがある点はB型肝炎(推定百二十万−百四十万人)と同様だが、慢性肝炎を発症するのはB型で約10−15%なのに対し、C型は約65−70%と発症率が高いのが特徴だ。

 四十歳以上のC型の感染者が適切な治療を受けずに七十歳まで過ごすと、20−25%が肝がんに進行すると予測されるとの研究報告もあるという。

 感染を広めたとされる血液製剤フィブリノゲンは、厚労省が二〇〇四年十二月、それまで非公表としてきた納入先の医療機関約六千六百カ所を公表した。このほかウイルスの検査方法が確立されていなかった一九九二年以前に輸血を受けた人などは、C型肝炎感染の可能性が高いとされる。

 厚労省は二〇〇二年度から「早期発見、早期治療」を目指しB型、C型を含む肝炎の検査体制強化や治療方法の研究などの総合対策を推進している。しかし一連の対策は国の過失を前提としたものではない。老人保健法に基づくウイルス検査(四十歳以上対象)の〇四年度の受診率は25・1%にとどまる。治療にかかる医療費も、劇症肝炎を発症した場合以外は助成制度はない。

 日本肝臓病患者団体協議会の高畠譲二事務局長は「司法の場で国の責任が認められた以上、国は医療費を軽減する方策を進めるべきだ」と話している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060622/mng_____kakushin000.shtml