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2006年05月25日(木) 00時00分

農薬に残留基準値 超過食品は流通禁止 東京新聞

 食品中に残る農薬の規制を強化する「ポジティブリスト制度」が、二十九日から導入される。残留農薬が基準値を超えて検出された場合、その農作物や食品の流通が原則禁止される厳しい制度。導入を前に農家・産地や流通業者らは対応に追われている。食の安全を求める消費者にとっては期待の制度。どう変わるのか。 (遠藤健司・坂口千夏)

■農家 ほかの作物へ飛散懸念

 特産・春キャベツの収穫も終盤の神奈川県三浦市。キャベツ畑の横には、六月にも市場に出るカボチャが、黄色い花と小さな実をつけている。その横にはさらにネギ畑も−。梅雨を控え、病虫害対策が必要な時期だが、カボチャを作っている農家は「これまでと同じ農薬の使い方でいいものか…」と戸惑っている。

 今回のポジティブリスト制は、これまで基準値がなかった全食品に、残留農薬〇・〇一ppm以下という一律基準、または個別の暫定基準を設けた=別稿参照。農家の心配はここから生じる。

 例えば、カボチャに使う農薬Aの残留基準は、カボチャに関しては従来通り一ppm以下。一方、Aはキャベツやネギには普通使わないので、従来はそれらに関する基準がなかった。だが新制度では一律基準の〇・〇一ppmが適用される。

 Aが風で飛び、ネギなどに大量に付いたら…。基準値を超えた作物は流通禁止・回収となる。

 三浦市は海に近く、風がよく吹く。畑は小さく間隔も狭い。三浦市農業協同組合生産販売部の福島大輔部長補佐は「風向きに注意してまくなど対策を呼び掛けるが、ドリフト(農薬の飛散)を完全に防げる保障がない」と頭を抱える。

 基準値は農産物や肉、魚、加工品にも適用。規制は十六万項目に上る。「作物や収穫期により使う農薬は違う。情報は膨大。農家は把握しきれない」と福島さん。同農協は主力野菜の品目ごとに、飛散した場合の残留リスクが分かるリストを作り、農家に配った。隣の畑の品目を考慮して農薬を選ぶよう指導中だ。

■市民団体 安易な国際基準の採用

 残留農薬問題に早くから取り組んできた日本生活協同組合連合会(日本生協連)は「これまで対象外だった部分にも規制の網がかかり、食品の安全性が大きく前進」と新制度を評価する。

 ドリフト対策から、ヘリコプターによる農薬の空中散布中止の動きもあり、効果は見込める。

 だが、疑問の声もある。市民団体・反農薬東京グループの辻万千子代表は「残留基準のある農薬数は増えたが、世界中から一番ゆるい基準を集めてきた。基準自体を厳しくしたわけでない」。

 「暫定基準」は国際食品規格(コーデックス)を最優先で採用した。コーデックスの数値が、農薬取締法の登録保留基準より高くても、その数値を用いるため、結果的に農薬摂取量が増える事態もありえるという。

 また「日本の食生活に国際基準を安易に採用した」という批判もある。例えば、国際基準だと殺虫剤カルバリルは、玄米で一ppmだが、米ぬかでは一七〇ppm。米ぬかをほとんど使わない海外の基準が、ぬかみそ多用の日本でも安全なのか、証明はないからだ。

 日本生協連も「科学的な情報による基準見直しが今後必要」とする。

■799種に基準設定

 現行は、使ってはいけないものを定めた「ネガティブリスト制」。食品衛生法で農薬など283種について残留基準があり、その数値を超えた食品は販売できない。ただ、基準がないものについてはいくら残留していても取り締まれなかった。

 一方、ポジティブリスト制は使ってよいものを掲げ、農薬など計799種をリスト化。国内で残留基準がないものは国際基準などから「暫定基準」を設けた。海外にも判断基準がない場合は0.01ppmを「一律基準」に。違反した食品は流通が禁止される。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060525/ftu_____kur_____000.shtml