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2006年04月19日(水) 00時00分

消費者金融と銀行深まる蜜月 東京新聞

 消費者金融大手のアイフルが強引な取り立てなどで業務停止命令を受けたが、最近、気になるのがメガバンクグループと消費者金融業界との関係だ。消費者金融の大手が銀行ブランドと資本提携する中で、独自路線のアイフルも無担保ローンの保証業務で地銀などとの提携を拡大している。今回の行政処分などを受け、両者の“蜜月”関係は−。

 「かつて私が超一流だと思っていた銀行が、サラ金業者と一緒に広告を出している。近ごろ不愉快に思っていることの一つだ」

 三月の参院予算委員会で、消費者金融問題を質問された与謝野馨金融担当相は、こう言い切った。

 銀行と消費者金融の結びつきは、ここ数年深まっている。

 三井住友と、三菱東京UFJはそれぞれ、消費者金融大手のプロミス、アコムをグループ傘下に置く。例えば、三井住友銀行で金を借りようと思えば、金利8−12%の銀行のローン、15−18%と利息制限法の限度内の「アットローン」、18−25・55%(グレーゾーン金利)の「プロミス」の三種類が、借り手のニーズやリスクに応じて用意されている、というわけだ。

■「消費者ニーズあるのは事実」

 こうした提携について、「複数金利帯の商品を適切に提供することは、幅広い消費者の生活の充実に資する」(三井住友)、「消費者金融に対するニーズがあることは事実であり、提携によって、個人向け貸し出しのノウハウをより安定的に得られる」(三菱東京UFJ)と説明する。

 一方、アイフルは、メガバンク傘下には入っていないが、地方銀行や信用金庫など八十二金融機関と個人、事業者向け無担保ローンで業務提携を結んでいる。

 「総合金融グループ」を目指すアイフルにとって、銀行との提携は従来の顧客以外の層にも業務を広げられ、金融機関側は、アイフルが持つ審査ノウハウを活用でき、アイフルが元本などを保証するためリスクを低く抑えられる。さらにアイフルは事業者向けローンで、住友信託銀行と合弁会社を設立。昨年には東日本銀行の筆頭株主になっている(現在は第三位)。

 だが、今回の行政処分は業務拡大に影を落とす。

 すでに南都銀行(奈良)、京都北都信用金庫(京都)などが、アイフルと業務提携するローンの新規受け付けを一時中止。一方、但馬信用金庫(兵庫)は昨年、債務者がアイフルを過払い問題で集団提訴した際、提携の一時中止に踏み切った。同社は「コンプライアンスが重要視される中、(集団提訴が)あれほどセンセーショナルに報道されたのは遺憾だった」と説明。

 資本関係がある東日本銀行は「行方を見守りたい」と“静観”の構えだ。

 こうした状況について、ある地方金融機関の関係者は「個人的には、なぜ消費者金融と組まなきゃいけないんだとも思う。でも、少しでもリスクを低くするためには、やむにやまれぬ部分はある」とため息をつき、元地方銀行員は「個人ローンは安定的に高収益が得られる大事な商売。消費者金融といっても、今は一部上場企業だし、焦げ付いた時の保証料は入ってくるんだから、どんな取り立てをしていようが二の次」と本音を漏らした。

 一九八〇年代前半には「サラ金」地獄といわれ、それまで消費者金融にとって有力な資金の提供先だった銀行業界は、大蔵省の指導を受けて一斉に手を引いた。その銀行業界が再び、消費者金融に秋波を送るようになったのはなぜか。

 金融ジャーナリストの須田慎一郎氏は「銀行がワールドバンクとして認知されるには、収益を上げるしかない。収益を上げるには個人向けの貸し付けしかなく、世間の目は気になっても、徹底的に消費者金融を活用していくことが生き残る道だ。日本の銀行がモデルにしている米銀の大手は、収益の六、七割が個人向けの消費者ローン、カードローン。米銀に対抗するのは、米銀のモデルを踏襲するのが手っ取り早い」と、「蜜月」の背景を解説する。

 須田氏によると、日本の銀行も八〇年半ば以降、個人向けローンに一斉に参入したが、ノウハウがなかったことと、消費者金融業者が持つ多重債務者の情報を持っていなかったことから、失敗に終わった。そこで「業界の情報、ノウハウを手に入れるため、いっそ手を結んでしまおう」(須田氏)となったという。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏は「『サラ金』地獄の時は大手銀行ががんがん融資していたが、批判の高まりとともに、一斉に資金を引き揚げ、消費者金融は社会的制裁を受けた。消費者金融業界には銀行への怨念(おんねん)が残ったが、低金利時代になると、資金の運用先に困っていた銀行側は、収益性の高い消費者金融の小口業務を重視するようになる。大手消費者金融のうちプロミスやアコムにすれば、当時、業界トップの武富士を超えるためには銀行と組むのが一番で、両者の蜜月が始まった」と分析。その上で、提携のメリットについて「大手消費者金融は銀行の看板、銀行は消費者金融の小口融資のノウハウが必要だった」と言い切る。

<デスクメモ>

 駆け出し記者のころ、児童養護施設を取材した。親が失跡した原因の多くが借金。“サラ金地獄”という言葉が世の中に出始めたころだ。あれから二十数年。今、地方の道路沿いなどにも、消費者金融の無人契約機の“小屋”が乱立する。二百万人の多重債務者を抱える中、まっとうな風景なのかどうか−。 (透)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060419/mng_____tokuho__000.shtml