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2006年04月11日(火) 00時00分

フライ&ゼリーフライ(埼玉県行田市)読売新聞


薄いお好み焼きというイメージのフライ(卵入り300円)。もちもちとした食感がたまらない。ソースかしょう油を選ぶ

 フライといっても揚げ物でない。ゼリーフライは揚げ物だが、ゼリーを揚げるわけではない。全く別の食べ物だが、行田では昼食やおやつの定番。一体どんな料理なのか…地元を訪ねた。

安くておいしい!行田の珍名物
揚げないフライとゼリーフライ

 国宝・金錯銘鉄剣が出土した稲荷山古墳のある埼玉古墳群で知られる行田市は、江戸時代に忍藩十万石の城下町として栄えた。下って大正、昭和期には足袋産業が隆盛をきわめ、現在も全国一の生産量を誇る。この足袋工場の工員の間で、安くて腹持ちがいいと広まり、名物になったのがフライだ。

 行田は古くから小麦の産地だったこともあり、農家では「水焼き」といって、水で溶いた小麦粉を焼いて食べていたという。これにネギや豚肉、卵を入れてアレンジしたのがフライだ。大正14年創業というフライ店、古沢商店を訪ねた。


古沢商店でのひとコマ。左が店主の古沢芳子さん。メニューはフライと焼きそばのみ

 引き戸に手をかけると、フワーっと甘いソースの香りが漂ってきた。店内は10人も入ればいっぱいで、昔懐かしい駄菓子や飲み物、日用品が並ぶ。

 「一番よく出るのは卵入りだね」。店主の古沢芳子さんが、鉄板の上で早速焼いてくれた。焼きあがると、「ソースかい? しょう油もいいよ」と聞かれ、迷わずソースを選んだ。

 「焼きたてが一番だよ」と地元客のアドバイスもあってすばやく一口。生地のプルプル、もちもちとした食感と、甘いソースにネギと豚肉の細切れの歯応えが抜群。味はしいて言えばお好み焼きに近い。

 で、なぜフライなのかと尋ねると、「フライパンで焼いたからフライ」と古沢さん。古沢さんの母、む免さんが大正時代に始めたころはフライパンで焼いていたという。「20〜30年前くらいまでは、女子工員さんたちがよく来てたよ」。つい、思い出話も。


 一方、フライと名前は似ているが、全く違う食べ物が、ゼリーフライ。ふかしたジャガイモに、おからとネギやニンジンなどの野菜のみじん切りを混ぜて、衣をつけずに揚げる。こだわりのゼリーフライを出すという、かねつき堂へ。

 「まず食べてみて」と出されたゼリーフライは約10センチ大。外はカリッ、中はふわトロ。こちらは、いわばコロッケだ。

 「銭の形から”銭フライ“。それがなまった」とは店主の大澤照夫さん。「日露戦争帰りの人が現地の野菜まんじゅうをヒントに作ったそうです。昔はリヤカーや屋台で売ってました」と言葉を継いだ。材料が野菜とおからなので食物繊維が豊富。離乳食や高齢者にもおすすめという。

 「昔からふらい屋は地元の集会所なんです。昼には近くで働く人や学校帰りの子供たち、夜には夕飯のおかずにと主婦が集まる」と大澤さん。

 一見簡単そうに見えるフライとゼリーフライだが、「家で作ってみても味が違う!」と店に行く人が多いという。実際、市内には専門店が34軒あり、フライマップもある(行田市商工観光課048・556・1111)。(文/中文子 写真/藤井勝彦)

旅行読売5月号より

http://www.yomiuri.co.jp/tabi/gourmet/fudoki/20060411tb04.htm