悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。
また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。
子どものころ、「へんしーん!」のかけ声とともに、ヒーロー気分で原っぱを駆け回った人は多いはずだ。今年は仮面ライダー35周年、ウルトラマン40周年という、特撮ヒーローにとって節目の年。今、ヒーローに熱くなっているのは中年男性や母親世代の女性だ。(河村武志)
俳優の「藤岡弘、」さん(60)がライダー1号の変身ポーズを決めると、「ライダー!」「かっこいい!」と歓声があがった。3月末にバンダイから発売された「仮面ライダー変身ベルト」のPRを兼ね、6日夕に東京・渋谷で開かれたトークイベント。会場には中年男性の姿が目立つ。
1971年にテレビ放映が始まった仮面ライダー。ベルトは当時も子ども向けに販売されたが、新発売のベルトは腰回りが85〜110センチで、ターゲットは30〜40歳代男性だ。税込みで3万1500円だが、バンダイは「目標の1万個は完売の見通し」と話す。
イベント会場でベルトに藤岡さんのサインをもらった世田谷区の会社員遠藤秀理さん(41)は「子どものころは親に買ってもらえず、35年待ってやっと買えました」と満面に笑みを浮かべた。
仮面ライダーやウルトラマンの後継ヒーローは今も活躍し続けているが、節目を迎え、“原点回帰”の傾向が目立つ。
昨年公開の映画「仮面ライダーTHE FIRST」はライダー1号、2号が登場。興行収入は約1億円で、製作・配給元の東映ビデオは「予想以上のヒット。客層は中年男性が多かった」と話す。4月1日までテレビ放映された「ウルトラマンマックス」は、2代目のウルトラセブン似の姿で、バルタン星人など懐かしい怪獣と対決した。
「アッチャーン」「ヒロヤくーん」。ステージの5人の戦士に声援が飛ぶ。文京区内で先月開かれた、「魔法戦隊マジレンジャー」(2月まで放映)の出演者5人によるトークショー。会場は子ども連れの母親らで埋め尽くされた。
杉並区から長女(7)、長男(2)を連れてきた主婦赤坂美奈津さん(41)は「娘の影響で番組を見始めたが、今では私の方がはまってます」。
「戦隊モノ」は、75年の「秘密戦隊ゴレンジャー」以来、今年で30作目。最近は主人公に「イケメン」が起用されることが多く、写真集やDVDが発売されることもある。
この背景について、特撮ヒーロー関連の著作が多い「空想科学古物商 えむぱい屋」店長の堤哲哉さん(45)は、「制作者側は主婦層を意識して配役を決めている」と指摘。堤さんは、最近の特撮ものは正義と悪の区別がつきにくく、「子どもにとっては少し難しい」とも感じている。
仮面ライダーやゴレンジャーをプロデュースした平山亨さん(77)は「かつてヒーロー番組の製作者は『ジャリ番』と呼ばれて一段低く見られたが、私にはジャリ番の誇りがあった。ヒーローはいつの時代も子どものためのもの」と語る。
ヒーロー低い地位命の尊さや助け合う精神、人を信じる心の大切さ、困難に直面しても絶対にあきらめないこと——。仮面ライダーをはじめとする幾多のヒーローは、子どもたちに「人の道」を説く絶対不可欠な存在だ。そう信じる私にとって、現在の特撮ヒーローブームはうれしい。しかし、ブームにともない、特撮ヒーロー番組の「地位」が向上したかというと疑問である。
今でも俳優の何割かはヒーローを演じたことを経歴から抹消し、インタビューで触れられることを拒む。また、特撮ヒーロー映画は、各種映画賞の対象とすら見られていない。主な視聴対象が子どもというだけで、不当に低く見られているのが実情だ。日本アニメの地位が向上したのとは対照的で、残念でたまらない。
特撮ヒーローだって、日本が世界に誇る文化なのだ。日本ほど多くの特撮ヒーロー番組が長年、定期的に作られている国はない。ヒーローは世界各国に輸出され、支持されている。国は違っても、同じ変身ポーズをとれば、同じ気持ちになれるというのは、素晴らしいことではないか。特撮ヒーローにも正当な評価がなされる日が、早く来てほしいものである。(鈴木美潮)
◆
このコーナーへの意見や感想、情報はnavi@yomiuri.comにお寄せください。