悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年03月29日(水) 00時00分

麻原裁判 肉声聞けぬもどかしさ 東京新聞

 オウム真理教事件は真相解明ができぬまま、終わりを告げることになりそうだ。東京高裁の控訴棄却の決定のためだが、麻原彰晃被告の肉声が聞けずに、死刑が確定するという展開は異様だ。

 起訴から十一年。近年、麻原被告の裁判ほど、“迷走”を続けた刑事裁判はないだろう。

 初公判から死刑判決の言い渡しまで八年かかった。裁判迅速化の観点からは批判があるに違いない。

 だが、地下鉄サリンなどの事件は、世界を驚がくさせたテロ事件だった。何しろ、十三の事件で殺害された犠牲者は二十七人を数えている。

 事件の大きさが多大な時間を必要とした面があるうえ、麻原被告が法廷で意味不明の言動をしたり、弁護人との意思疎通ができなかったことも多々あった。

 しかし、一審の弁護人は予想される論点のすべてを争うという形で、少なくとも審理の土俵には乗り、被告の権利を守ろうとした。

 これに対して、二審の弁護人はどうだろうか。控訴審が開かれるためには、控訴趣意書が東京高裁に提出されねばならない。そのことは、法律家であるならば十分に、承知していたはずだ。

 かつ、既に趣意書が完成し提出できる状態なのに、高裁が決めた昨年八月の期限を迎えても、あえて提出しない方法をとった。

 その結果、今回の「控訴棄却」という高裁決定を招いてしまったのである。弁護人は麻原被告との意思疎通ができないことなどを理由としていたが、それは一審でも同じ状況だったのではないか。

 また、弁護人は医師六人による精神鑑定を次々と行い、麻原被告には訴訟能力がないと主張していたが、いったん控訴審を始めてからでも鑑定は可能だったはずである。「裁判引き延ばし」と批判されても、やむを得まい。

 今後、高裁決定への異議申し立てや最高裁への特別抗告が認められないと、死刑が確定する。結果として麻原被告にとって、裁判を受ける権利が奪われることになってしまった。弁護士の使命と責任の重さを痛感させる。

 それにしても、有名大学を出た若者たちが、「グル」と称した教祖・麻原被告に帰依し、数々の事件を起こした異様さは、世間の人々の記憶から容易に消えない。

 いったいオウム真理教事件とは何だったのか。麻原被告本人の言葉が聞けないまま、裁判が打ち切られることへの疑問は、被害者ならずともみんなが感じているのではないか。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060329/col_____sha_____003.shtml