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2006年03月28日(火) 03時15分

「早く死刑確定を」「真実聞けず残念」遺族ら思い複雑読売新聞

 オウム真理教の松本智津夫被告(51)逮捕から11年。地下鉄、松本両サリン、坂本堤弁護士一家殺害など、一連の事件を指揮したとされる松本被告の控訴審は27日、東京高裁の控訴棄却決定で、一度も法廷が開かれずに審理打ち切りの可能性が高くなり、死刑確定の公算が大きくなった。

 被害者らの間には、「裁判の引き延ばしは許されず、当然」と評価する意見の一方、「本人の口から真実を聞けず残念だ」という声も漏れるなど、複雑な思いが交錯した。

 地下鉄サリン事件で夫を亡くし、「被害者の会」代表世話人を務めてきた高橋シズエさん(59)は、「高裁は適切な判断をしたと思う。真実を語ってほしいと願っていたが、1審の審理が進む中で、被告には何も期待できないと分かった。今となっては、1日も早く刑が確定してほしい」と胸の内を語った。

 教団に拉致され、命を落とした仮谷清志さんの長男、実さん(46)は午後8時すぎ、勤務先から東京都内の自宅に戻ると、2階の仏壇前で清志さんの遺影に手を合わせ、控訴棄却決定を報告。「父も裁判の進行を遅らせようとした弁護人のやり方にはイライラしていたと思う。自分の子どもの成長を見て、時の流れを感じる」と話した。

 坂本弁護士一家殺害事件で犠牲になった妻、都子(さとこ)さん(当時29歳)の茨城県ひたちなか市の実家では、父親の大山友之さん(75)が、「もう少し早く結論を出せたのではという思いはあるが、高裁もあるべき判断をしてくれた」と評価する。だが、「なぜ娘たちが、あの集団に殺されなければならなかったのか。納得のいく答えは裁判で何も出ておらず、まだ仏前には報告できません」と、目に涙をにじませた。

 松本サリン事件の第一通報者で、被害者の河野義行さん(56)は、意識が戻らない妻、澄子さん(58)を長野県松本市の療養施設に見舞った後、高裁の決定を知った。「控訴審が1度も開かれず、(松本被告が1審判決の)どこに不満を持っているのか、明らかにならなかったのは残念だ」と話す一方、「妻の命がいつまで続くのか、1日1日を大切にし、(もし死刑が確定すれば)事実だけを伝えたい」と語った。

 教団信者の親たちでつくる「家族の会」会長で、自らも教団から毒ガスで襲撃された永岡弘行さん(67)も、「真相が何も明らかにならず残念でならない」と話す。永岡さんは、信者だった息子を脱会させるため、逮捕前の松本被告に何度も会っており、「彼が『自分は親に虐げられて育った。だから優秀な学校に通って、食べていける人間が憎い』と言っていたのを覚えている。事件の背景には、彼のこうした感情があるのではないか。本人から説明が聞きたかった」と漏らした。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe4900/news/20060328ic02.htm