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2006年03月24日(金) 12時34分

「情報は白日の下に」原則読売新聞

[異議あり匿名社会]「英米の現状<3>」

 大富豪のデビッド・ロックフェラー、大手ネット証券創業者のチャールズ・シュワブ、連邦議会議員、ニュースキャスター……。

 2001年11月、ワシントンを拠点に環境問題を調査・啓発するNPO「エンバイロメンタル・ワーキング・グループ(EWG)」が、ホームページ(HP)で公開した全米の農業補助金受給者のデータベースは、大きな波紋を呼んだ。本来は小規模の農家を守る制度だが、シュワブ氏が毎年56万4000ドル(現在の為替レートで約6600万円)を受け取るなど、富裕層の名が多数あったからだ。

 米議会では当時、農業補助金を増やす新法案を審議中。HPへのアクセスは3か月で2000万件に達した。

 EWGは情報公開法を駆使し、農務省にこの情報を開示させた。

 「米国の情報公開が優れているのは、個人名と受給額まで分かるところだ。日本では名前と金額が塗りつぶされる可能性もあるが、それでは意味がない」。日米の情報公開制度に詳しく、日本の裁判所で自由にメモをとることを裁判で勝ち取った大宮法科大学院大学のローレンス・レペタ教授は言う。

 日本の情報公開法では、公務員の職務に関する情報を除き、個人は特定できない形での公開が原則。官庁には公益上重要なら個人情報を含む情報を公開できる裁量があるが、積極的には行われていない。

 米国は今年、情報公開法の施行から40年。その根底には、国民の「知る権利」こそ民主社会の柱との共通認識がある。同法の立案にかかわったトーマス・サスマン弁護士は「過去、最高裁判事は『日光は最良の消毒剤』と指摘した。米国社会では情報は白日の下にさらけ出すのが原則で、情報開示は基本的にプライバシーに優先する」と話す。

 例外的に非開示になるのは、「プライバシーの不当な侵害が合理的に予測される場合」だ。その判断にあたっても「公益性」が常に考慮され、対象が政府高官のような公人であれば、公益性が優先される。

 米司法省の情報公開法担当者は、「一般的には公人の自宅住所は公表しないが、名前や年収などの情報は公開する」と説明する。日本で、官庁の幹部の経歴すら公表しない動きが出ているのとは対照的だ。

 情報公開法が昨年1月に施行されたばかりの英国でも、ガーディアン紙が昨年3月、欧州連合(EU)の農業補助金が支給されている人物と金額の開示を請求。04年10月までの2年間で、エリザベス女王所有のノーフォーク州サンドリンガム牧場に77万ポンド(同約1億5700万円)、チャールズ皇太子が所有する2か所の農場も計30万ポンド(同約6100万円)の補助金を受けていたことが判明した。

 同法を所管する独立監視機関「情報コミッショナー委員会」によると、同法に基づいて情報公開の対象となる公的機関は約10万あり、昨年は13万件の開示請求があった(推計値)。非開示などに対し、情報コミッショナーへの異議申し立ては、約2200件だった。

 英国では、情報公開が個人データ保護に反する場合は、公開しなくても構わないというのが基本的な考え方だ。だが、データ保護法はあらゆる個人情報を隠すものではなく、英国でも、地位の高い公務員ほど開示される情報は多くなる。

 リチャード・トーマス情報コミッショナーは、委員会の05年報告書でこう指摘している。「『知は力なり』。不必要に情報を隠すことは不信を招く。真の民主主義の番人は国民であり、情報の自由は国民に知をもたらす」

http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe6000/news/20060324icz2.htm