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2006年03月18日(土) 00時00分

プチ修行で無の境地読売新聞

静かなブーム 座禅 写経

薄暗い本堂で座禅を組む(東京・西麻布の大本山永平寺別院長谷寺で)

 都心の寺などで短時間、座禅や写経をする「プチ修行」に通う人が増えている。あまり時間がかからず気軽に参加でき、宗教色も薄い。ネットで知ってプチ修行を始め、「やめられない」とはまってしまう人も多いという。現代人はプチ修行に何を求めているのか。

 東京・西麻布の大本山永平寺別院長谷寺。毎週月曜夜の「月曜参禅会」に、数十人の老若男女が集まってきた。参加費は100円。静寂に包まれた200畳の本堂で約40分間の座禅を2回組む。

 若い修行僧が、手の形「法界定印(ほっかいじょういん)」や、片方の足を組む座り方「半跏趺坐(はんかふざ)」など、座禅の作法を教えてくれた。

 「思いをはなってください」。修行僧はそう繰り返す。思念にとらわれず、「無」になる方法だそうだ。だが座禅を組んで10分ほどで足がしびれてきた。「無」になろうと頑張ると、途端に雑念が浮かんでくる。腹減った。今何時だろ。体もモジモジ動いて、とても「無」の境地には達しそうにない。

 長谷寺の清水正法(しょうぼう)参務(58)によると、33年前に始めた参禅会の参加者は、数年前から急に増え始めた。「特別な宣伝はしていないのですが」と清水さん。

 午後9時に終了。毎週仕事帰りに来るという都職員・青谷洋二郎さん(55)(荒川区)は「座禅を組んでいるとそのうちに考えることがなくなる。その場から逃げられず、何度やってもつらい。でも終わったらまた来たくなるんです」と話す。


写経で無の境地になれるという(東京・江東区の成田山東京別院深川不動堂で)

 佛説摩訶般若波羅……。

 江東区の成田山東京別院深川不動堂で毎月1日に開かれる写経大会には約40人が参加していた。参加費は3000円。すずりなど道具一式を借り、筆で「般若心経」を書き写していく。大会の日以外でも毎日、申し込めば誰でも写経が出来る。僧侶の安田明城さん(40)は、「書き写すことで無の境地になれる」と誘(いざな)う。

 近くの飲食店店員、永田ゆう子さん(36)は、「悩みが深い時はうまく書けない。『私って煩悩の塊』と感じるけれど、そんな瞬間に本当の自分を発見できるんです」と話す。

 修行というと思い浮かべるのが「滝行」。都心から約2時間と少し遠いが、青梅市・御岳山で体験可能だ。宿坊の一つ「静山荘」では、チェックイン当日の午後と翌朝の2回、山内の滝に打たれることが出来る。

 白装束に身を包み、高さ約8メートルの滝に打たれた千葉県習志野市の主婦、野村美和子さん(48)は「心も体もすっきりした。目に見えない神秘的な力が滝行にはある」と言い切る。

 プチ修行について情報を交換する「宿坊研究会」のサイトのアクセス数はここ1、2年で急増した。同研究会代表の堀内克彦さん(27)は、「修行に興味を持つ人は潜在的に多かった。一過性のブームではなく、日本人の生活習慣の中に定着していく気がします」と分析する。

 大阪大学の川村邦光教授(宗教学)は、「世俗の情報に対して距離を置いて生きたいと願う人が増えてきた。修行に没頭する層は働き盛りの男性会社員ではなく、若者や女性、定年退職後の夫婦たちが中心。『無』になることで、人生をリセットしようと考えるのではないか」と話す。

腹式呼吸で“爽快脳波”

 プチ修行には医学的な効果もあるらしい。

 東邦大学医学部の有田秀穂教授(58)(統合生理学)は、20年以上に及ぶ研究の末、座禅などの際の呼吸法が心身の爽快(そうかい)感を生み出すことを突き止めたという。ゆっくりと「吐く」ことに意識を置いた腹式呼吸を繰り返す座禅は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンを活性化。座禅を組んでしばらくするとセロトニンが働き出し、ウオーキングの直後などと同様の「スッキリ爽快」な脳波が出るそうだ。

 有田教授は「太極拳や念仏でも原理は同じ。座禅を組んですぐ眠くなる人は、きちんと呼吸をしていないから。声を出しながら座禅をするなどの工夫をすれば、誰でもセロトニンを活性化させることが出来る」と強調する。

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