悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年02月28日(火) 23時48分

情報共有し信頼社会へ…「匿名社会」座談会(下)読売新聞

 ——匿名社会を乗り越えるための方策を考えたい。

 山岸 互いに行動を縛り合う社会が成り立たなくなった今、顔見知りの範囲を超えて信頼を醸成するために情報を出し合い、社会を透明化することが重要だと思う。情報の透明化を通して効率的に社会を運営していくのが、「信頼社会」だ。

 ——信頼社会を作るには何が必要か。

 山岸 情報開示を進め、隠すことが不利になるシステムを作らなくてはいけない。信頼社会に移行するかどうかは、情報を積極的に出すメリットを皆が理解するかどうかにかかっている。弱者が身を守るには互いにまとまって助け合うことが有効だが、不安に駆られて情報を出そうとしないため、今は助け合いさえ出来なくなっている。

 ——弱者を守る仕組み作りが立ち遅れていないか。

 堀部 保護法だけでは対応できない。個人情報の悪用、高齢者や子どもの被害を防ぐには、新たな制度面での枠組みが必要になる。情報の共有には、それぞれが個人情報を管理し、守るという意識がないといけない。日本ではそれが育ってこなかった面もある。個人情報の利用と保護のバランスを図っていくには一般市民の理解が不可欠で、メディアの役割も大きい。

 ——何を守り、何を共有すべきか、きちんと考える必要がある。

 山岸 その区別はとても重要だ。弱者には、いろいろな形のプロテクト(保護)を提供しなければならない。一方、情報を発信するメリットにも目を向けないといけない。

 ——個人情報がある程度広まっていることを前提に、子どものころから消費者教育をする必要性は。

 江川 より良い人生を送るための知恵を得ていくことも教育の目的で、若い世代への消費者教育は大事だ。「情報弱者」をどう保護するかも重要で、独り暮らしの高齢者が財産を奪われないよう、相談できる人をつけるような制度を充実させるべきだと思う。

 堀部 自治体の役割も大きい。最近、神奈川県は、個人情報の保護と利用のバランスを図ることを訴える手引を作り、配布しはじめた。ただ、全体としては、消費者問題は軽視されており、課題は多い。

 山岸 今、日本人の倫理観の低下が言われるが、崩れているのは武士道、無私の精神、公共奉仕、忠誠であり、この「統治(政治)の倫理」の崩壊に人々は不安を感じている。だが個人情報がかかわるのは、「お互いがうまくいくようにしよう」という商人道で、「市場(商人)の倫理」。その確立はこれからだ。一方的にプロテクトせず、必要なものは共有し、円滑に運ぼうとする倫理観を育てることが重要だろう。

 ——個人情報保護法の運用見直しが始まっている。現状と見通しは。

 堀部 保護法の見直しは必要だ。施行後3年をめどに検討することになっており、国民生活審議会の個人情報保護部会で、来年夏までに見直すべき点は見直す方向で議論していく。

 ——官の情報隠しには、もっと情報公開を利用して対抗しなければと思う。

 江川 どんな社会に住みたいのか、一人一人が考えることが大事だ。匿名社会なのか、透明社会なのか。今はあるべき社会の全体像が見えず、目の前の問題にとらわれてしまっている。官の情報隠しに対しては、知る権利がどれほど大切なものなのか、憲法が出来た時にもう一度戻って考え、行動する必要がある。知る権利が制約されつつある現状と、その行き着く先はどうなるのかを訴えなければならない。ルール作りはそこから始まる。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe6000/news/20060228ic25.htm