悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年02月21日(火) 00時00分

松本公判 重大な局面読売新聞


松本被告が拘置されている東京拘置所(本社ヘリから)
審理なし 死刑確定も

 オウム真理教の松本智津夫被告(50)について、東京高裁から精神鑑定を依頼された西山詮医師が20日、「訴訟能力あり」との鑑定意見書を同高裁に提出した。同被告の精神状態を巡る見解の対立で、1審の死刑判決後、空転を続けてきた控訴審は、どのような展開をたどるのか——。重要局面を迎えた松本公判の今後を展望する。(社会部 木下吏)

ケース1 控訴棄却決定

 「訴訟能力」とは、刑事裁判の手続きを理解する能力のことで、裁判を進める条件として必要とされるものだ。松本被告の弁護人は「被告の訴訟能力は失われているから、公判を停止して治療させるべきだ」と一貫して主張してきた。

 これに対し、東京高裁は昨年8月、「松本被告には訴訟能力がある」との見解を明らかにしており、今回の鑑定は、その確認のためという意味合いが大きい。

 今後、同高裁が西山鑑定を追認することは、確実と見られる。

 その場合、弁護人が昨年8月31日の提出期限を過ぎても控訴趣意書を提出していないことが問題になってくる。刑事訴訟法は、期限内に提出できなかったことに「やむを得ない事情」がなければ、裁判所は控訴を棄却しなければならないと定めているからだ。

 弁護人は趣意書を出さないのは「訴訟能力がないことを確信しているため」と説明してきたが、西山鑑定により、その根拠が崩れることになり、「やむを得ない事情」が認められる余地は少ない。控訴棄却決定が出され、最高裁で維持されると、控訴審で公判審理が一度も行われないまま、死刑判決が確定するという異例の展開になる。

控訴趣意書 例外的に受理 ケース2 公判開始

 松本被告の弁護人が今後、控訴趣意書を提出してくることも想定されるが、その場合、ポイントになるのは、東京高裁がこれを受理するかどうかだ。

 松本被告が起訴された事件では、27人が命を奪われている。同高裁が事件の重大性を考慮し、一度も審理を行わないまま、裁判を終結させることを避ける意味から、例外的に趣意書を受理して公判を開始するという選択肢もありうる。

 ただ、松本被告の弁護人は昨年8月31日に、趣意書の骨子を裁判官に示しながら、そのまま持ち帰った経緯がある。このため、裁判関係者の間では、「今になって提出を認めれば、弁護人の訴訟遅延行為を認めてしまうことになる」(刑事裁判官)と指摘する声が多い。

ケース3 辞任戦術

 もう一つ、考えられるのは、弁護人が辞任する戦術に出たケースだ。

 特に問題になるのは、同高裁が控訴棄却決定を出した後に、弁護人が不在になった場合。被告には死刑確定を避けるため、高裁への異議申し立てや、最高裁への特別抗告が残されているが、こうした手続きを弁護人に行ってもらえなくなる。「公判手続きではないので弁護人は必要ない」との説もあるが、「被告の権利を損なう」という意見も根強い。裁判所が新たな国選弁護人の選任を迫られると、再び手続きが数か月間、空転する事態も考えられる。

控訴趣意書  控訴した側が、1審判決の不服部分を主張する書面で、控訴審の審理内容を決める土台となる。時間不足などで提出が遅れそうな場合は、通常、期限が延長されるが、高裁に訴訟遅延目的と判断されれば、延長は認められない。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe4900/fe20060221_r01.htm