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2006年02月10日(金) 14時44分

がん対策に個人情報の壁、病院がデータ提供拒否読売新聞

 がん対策の根幹をなす「地域がん登録」制度が、個人情報保護を理由にした過剰反応で医療機関などの協力を得られない事態に直面している。

 厚生労働省は「がん登録は個人情報保護法の適用外」と通知しているが、実施する35道府県市のうち10県が読売新聞の調査に、病院などからデータ提供を拒否された経験があると答えた。

 協力を得られなければ、正確な発症率を算出できないなどデータ精度の低下を招き、がん研究や対策に支障が出かねないだけに、実施する自治体などからは「公益性を理解してほしい」との声が上がっている。

 地域がん登録では、病院から自治体に、患者の病状だけでなく、氏名や生年月日も報告される。

 山形県のがん登録を担当している同県立がん・生活習慣病センターには、昨年4月の保護法全面施行後、医療機関から生年月日など複数の項目が空欄のままの登録用紙が多数届けられ、「患者情報を提供していいのか」という質問も相次いだ。同センターの柴田亜希子専門研究員は、「問題ないと説明しているが、通知をよく知らない病院もある。誤解したまま中止されるのが一番困る」と話す。

 医療現場の対応について、鹿児島県は「個人情報保護を理由に非協力的な医療機関は多く、依頼をしても報告は少ない」と嘆き、滋賀県は「トラブルが起きれば医師個人の責任になると思われている」と話した。

 がん登録では、患者への告知の問題もあり、全員の同意を得るのは難しい。保護法では、「公衆衛生の向上のため特に必要」なら本人の同意がなくても個人データを第三者に提供できるとしており、厚労省は2004年1月、がん登録の患者情報については保護法の適用外との通知を出した。

 それでも川崎市は現在、市立病院から神奈川県へのがん登録を中止している。03年4月、市の審議会が、「同意のない患者情報の提供は市の個人情報保護条例違反」との答申を出したためだ。兵庫県も00年度末で登録を休止、千葉県でも県の審議会で検討中だ。

 神奈川県立がんセンターの岡本直幸がん予防・情報研究部門長は、「治療成績を参考にできるなど本人にも社会にも役立つ制度で、がん登録なくしてがん対策はありえない」と訴えている。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe6000/news/20060210it06.htm