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2006年01月27日(金) 00時00分

問われる市場の番人(下) 危機意識欠いた東証読売新聞

システム不備 追い打ち

 東京証券取引所でのライブドア株の取引時間が、わずか1時間に短縮された26日。それでも出来高は約1億1800万株に上り、東証マザーズ市場全体の約95%を占めた。

 ライブドア株は上場時の3万分の1まで株式分割されている。大量の株式が思惑的な取引で乱舞し、その負荷で東証のシステムは連日、綱渡りの運営を強いられる。

 「大幅な株式分割を実施した上場会社が不利な扱いを受けないよう、取引所に支払う手数料を軽くする」

 東証などが2001年9月に発表した「アクション・プログラム」には、こんな優遇措置まで盛り込まれていた。相場の長期低迷から脱するため、個人投資家を何とか市場に呼び込もうとする苦肉の策だった。

 それが思わぬ“副作用”を生んだ。

 18日に東証が全銘柄の取引停止に追い込まれたのは、「ライブドア・ショック」に、システム強化を怠ったための「東証ショック」が重なった結果だといえる。

 野村資本市場研究所の大崎貞和・研究主幹は「売買成立件数の東証の予測が甘かった」と指摘する。

 1日の処理能力は、株式市場が低迷している03年3月の計画に基づいて増強されたが、当時の平均売買成立件数は、今の約5分の1の70万件。ネット取引を駆使するデイトレーダーの急増などはほとんど予想していなかった。

 一方、ニューヨーク証券取引所の処理能力は高い。東証の4〜5倍の2000万〜2500万件の売買を成立させることができる。

 グローバル化の中で、世界の主要株式市場は激しい競争を繰り広げている。

 使い勝手の悪い市場は世界的なマネーの流れから取り残され、その国の経済は衰退に向かいかねない。

 「今や株式市場は巨大な装置産業だ。コンピューター投資の優劣がその帰すうを決める」。こんな感想を漏らす証券会社トップは多い。

 米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルも「東証が長期の経済低迷期にシステム投資を怠り、投資家の市場回帰に対応できなかった」と今回の事態を厳しく批判している。

 市場自体が劣化していれば、ルール違反に目を光らせ、抜け穴を封じる“市場の番人”としての役割も十分に果たせない。

 「途中で大幅な株式分割の弊害がわかったのになぜ05年3月の5分割超の自粛要請まで放置したのか」。ある大手証券の幹部は腑(ふ)に落ちない様子で語る。

 東証の上場・売買監視部門の陣容は全社員の3割の約200人に過ぎず、2351社(26日時点)を監視するのは事実上難しい。ニューヨーク証券取引所の上場・売買監視部門が全職員の4割の約700人と手厚い陣容で、04年には195件の証券会社の不正を摘発したのに比べ、東証は監視機能が力不足で、事件の未然防止もできなかった。

 ライブドア事件は、東京地検が強制捜査に入ってようやく表面化した。

 「捜査機関が動くのは、本来最後の最後」(河上和雄・元東京地検特捜部長)のはずなのに、金融庁、証券取引等監視委員会、東証などの“市場の番人”のいずれも、十分に機能を果たせなかった。そこに、効率優先で公平さへの目配りを忘れた日本経済の大きな問題がある。

 世界的に失われた日本市場・企業への信認を取り戻すため、原点に返ってすべてを見直さなければならない。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20060127mh11.htm