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2006年01月26日(木) 00時00分

問われる市場の番人(中) 証券監視委と監査法人読売新聞

貧弱 不正チェック体制

 「世界2位の経済大国が株式市場を監督する独立した機関を保有していない」

 ライブドアグループの証券取引法違反事件で前社長の堀江貴文容疑者が逮捕された23日、AP通信はこう伝え、日本の証券取引等監視委員会が、米証券取引委員会(SEC)のような強力な機関ではないことに懸念を示した。

 与謝野金融相も24日の記者会見で、「不正な取引形態を排除するため、人員の充実を検討したい」と述べ、監視委を増員する方針を打ち出した。市場の監視機能の抜本的な強化は、もはや内外共通の認識だ。

 監視委は証券不祥事を機に1992年に発足した。強制調査権を持ち、西武鉄道株の名義偽装事件で同社を証取法違反で告発するなど、05年6月までに74件の告発実績がある。ただ、06年度予算案でも318人体制で、3800人の米SECの10分の1以下に過ぎない。

 権限も弱い。米SECは行政処分権や立法提言権を持ち、上場企業にSECへの登録を義務付け、決算報告を求めている。一方、監視委は金融庁の付属機関に過ぎず、独自の行政処分権はない。

 政府や政治からの独立性が薄い監視委に代わって、「司法機関の検察が乗り出してきたのがライブドア事件」(上村達男・早大教授)との見方も有力だ。

 健全経営維持の最後の砦(とりで)、監査法人のチェック体制も差が大きい。

 米国は、大手会計事務所アーサー・アンダーセンがエンロンの粉飾決算を許した反省から、03年に上場企業会計監視委員会(PCAOB)を設けた。会計事務所はPCAOB登録を義務付けられている。

 日本でも04年、金融庁に公認会計士・監査審査会が設置されたが、日本公認会計士協会が実施した点検内容の間接的な検査などが主な任務だ。

 企業とのつき合いが深い日本の監査法人はかねてから、なれあい体質も指摘されてきた。青山学院大大学院の八田進二教授は「日本でも、審査会への登録制などを検討すべき時期にきた」と話す。

 02年に起きた米長距離電話大手、ワールドコムの粉飾決算事件。ニューヨーク連邦地裁は05年7月、元最高経営責任者(CEO)のバーナード・エバース被告に禁固25年の実刑を言い渡した。

 01年のエンロンの粉飾決算事件後、米国では翌年企業改革法が制定され、企業経営者への厳しい罰則を定めた。経営者は決算書が適正であることを宣誓し、違反した場合、その罪だけでも最大禁固20年または罰金500万ドル(5億7000万円)が科せられる。

 日本では、粉飾決算で証取法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪に問われても、懲役5年以下または罰金500万円以下と、罰則は極めて軽い。悪質な経営者らに「証券犯罪は割に合わない」と思わせるより効果的な措置が必要だろう。

 証券市場の規制緩和自体が悪いわけではない。しかし、日本は米国から規制緩和ばかりを学び、監視体制をなおざりにしてきた。

 自民党は投資事業組合への新たな規制などの検討に入った。民主党も日本版SEC設置法案提出を検討している。

 第2、第3のライブドア事件を防ぐためにも、市場の監視機能を総ざらいし、与野党一体で有効な手立てを尽くすことが求められる。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20060126mh10.htm