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2006年01月19日(木) 00時00分

(中)マネーゲームに限界読売新聞

堀江流経営手法

ライブドア・ショックで、東京株式市場に激震が走った。記者会見に臨む東証の西室社長(右)=18日午後6時59分、東京・中央区の東証で

 ライブドア本体の粉飾決算疑惑が明らかになった18日、東京株式市場はかつてない激震に見舞われ、株式全銘柄の売買停止に追い込まれた。

 安倍官房長官は18日夕の記者会見で、「このような(売買停止の)事態になったことは遺憾だ」と厳しい表情で話した。東京地検の強制捜査のメスが入ったことで、次第に明らかにされていくライブドアの“錬金術”のほころびが、巨大な市場を揺り動かす。

 1996年4月に出資金600万円で創業したライブドア(当時の社名はオン・ザ・エッヂ)は、2000年4月に東証マザーズに上場した。上場当初の株式時価総額は約570億円だったが、わずか6年弱で約7300億円(強制捜査前の今月16日)と、10倍以上の急成長をみせた。

 急成長を支えたのが、株価の上昇をもたらしやすいとされる「株式分割」と、現金がなくてもM&A(企業の合併・買収)が可能な「株式交換」とを組み合わせた“錬金術”だ。

 株式分割では本来、1株1000円の株式を5分割すれば、1株200円になるはずだ。だが、株式を分割した場合、新たに発行される株券が株主の手元に届くまでに50日程度かかり、その間は買い注文があっても、売れる株式の数が極端に品薄となるため、株価は企業の実力以上に値上がりしやすくなるとされる。

 実際に03年12月、株式を100分割したライブドア(当時エッジ)の株価は高騰を続け、株価は一時、分割前の8倍まで上昇した。ライブドアは上場後、計4回の株式分割を行い、当初の1株は3万株にも分割された計算だ。

 株式分割で株価をつり上げ、株式時価総額が膨れ上がった時に、もっぱら時価総額の大きさで交換比率の決まる株式交換によって企業を買収すれば、より有利な条件でM&Aが可能だ。

 05年2月のニッポン放送株大量取得の際に、株式公開買い付け(TOB)の義務付けられていない時間外取引を使ったのと同様、法の抜け穴を突く手法と言える。それでも、堀江貴文社長は「日本の株式市場は不備がある。勉強しないと、ずるがしこい人にだまされてしまう」と言い放ち、そのパフォーマンスが若い世代の支持を集めてきた。

 しかし、今回は、高株価を頼みとした「時価総額経営」を維持するため、粉飾決算などの違法行為を行っていたのではないかという疑惑すら持たれている。

 米国では、1980年代に株価をつり上げて株の転売などで利ざやを追求する「グリーンメーラー」による敵対的M&Aが横行したが、今では市場の規律や企業倫理の必要性が説かれている。相次ぐ買収で急成長した米通信大手ワールドコムは02年、粉飾決算が発覚し破たんに追い込まれた。

 自ら企業を育てることもなく、マネーゲームで成長を続ける手法の限界は明らかだ。経済評論家の奥村宏氏は「市場や企業はギャンブルではない。もう一度、足元を見直す時期にきている」と指摘する。

 東京市場の全面売買停止は、企業が倫理を失い、マネーが暴走を始めた時に、投資家のみならず、日本経済に回るツケがあまりにも大きいことを物語る。マネー至上主義を見直すことが求められている。

特集:ライブドア

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20060119nt01.htm