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2006年01月10日(火) 00時00分

「デジタル仙人」の初夢読売新聞

 一年の計は元旦にありと言うが、都内に住む伊藤政行さん(58)の元旦は常にも増して忙しかった。

 朝7時半。いつものように世界中から送られてくる500通前後のメールに目を通して最新の情報を把握、興味深い項目をブログ(www.jiten.com)で紹介する一方、11年前からひとりで書き続けてきた「マルチメディア・インターネット事典」への最新情報の書き足しに没頭した。

 この日は、別に二つの作業があった。月1回行う画像版データベースの整合性チェックと、昨年1年分の画像版と文字版をDVD計8枚に保存した上、ハードディスクから削除するコンピューターの大掃除である。文字版は無料公開しているが画像版は一般には公開していない。しかし端然と作業を積み重ねる。

 独・マインツのグーテンベルク大学博士課程に5年間在籍し、書誌学を学んだ碩学(せきがく)。「過去の情報と新しい情報を重ねることで全く新しい発見が表面化する」というポリシーから、ネット上の情報をURLを明記して次々に追記の形式で積み上げていく。利用者はリンクをたどり、深く深く学べる仕組みだ。

 現在、事典は2万6000項目、印刷すれば「電話帳数十冊分」という膨大な内容で、追記は日々数百項目に及ぶ。単なる技術解説でなく、デジタルが関(かか)わるあらゆる事象が対象だ。

 めったに出歩かずパソコンと書籍に囲まれて過ごす。たばこは吸わず、酒も10年前にやめた。「現代の南方熊楠のような」と問えば、「楽しいから続けているだけ。自分の墓場をネット上に作っているようなもの」と。凡人には想像も出来ない境地か。知人は「デジタル仙人」と評する。

 その伊藤さん、今年の夢は「ウェブ情報を利用したタイムマシン」を作ること。過去から未来までカバーする多数の分野の年表群を作り、縦横斜め自在に飛び回れる知の仕掛けだと言う。十全な理解はもちろんかなわないが、画像版の公開と合わせて、仙人の初夢が実ることを切に願う。(ITジャーナリスト 島田範正)

http://www.yomiuri.co.jp/net/column/kougengaku/20060110nt02.htm