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2005年10月13日(木) 00時00分

深刻な借金苦に“救いの手”  『まず相談』で自殺防げ 東京新聞

 日本の年間自殺者数は、一九九八年以降、七年連続で三万人を超している。中でも、経済的な理由が動機とみられる人は毎年八千人前後に達し、この大半は、消費者金融会社や信販会社、銀行などへの返済に行き詰まった多重債務者とみられる。政府や自治体による「借金苦自殺」への対策が急がれる。 (白井 康彦)

 「家族や弁護士に相談していれば、こんなことにならなかったと後悔しています」

 今月四日、名古屋地裁で、村田幹夫被告(47)は深くうなだれながら、罪状認否で心情を述べた。

 愛知県知多市で家族で経営していた鉄工所が倒産。銀行や消費者金融会社からの多額の借金の返済に追われ、弟と話し合う中で無理心中を思い立ち、今年四月に弟と二人で両親、妻子の命を次々に奪った。最後に弟とも刃物で刺し合い、村田被告だけが生き残って、殺人罪で起訴された。

 多重債務者の相談に乗る機会の多い弁護士や司法書士らは、村田被告の反省の言葉にうなずいた。死なないためには「ともかく相談」なのだ。

 破産や特定調停など多重債務の解決法はそろっている。多重債務に陥ったときの相談先も弁護士会、司法書士会、市民団体など数多い。しかし、相談せず自殺してしまう人が絶えない。

 「愛知かきつばたの会」事務局長の水谷英二さんは「多重債務の解決法を理解している国民は少ない。弁護士や司法書士を『縁の遠い存在』と感じている人が多いし、市民団体は知名度不足だ」と指摘する。

    × ×

 ここ二十年間の自殺者数の推移(グラフ参照)をみると、九七年までは二万一千−二万五千人でほぼ推移。ところが、九八年に一気に三万三千人近くになった。その年から目立って増えたのが、経済的な理由(経済生活問題)による自殺者。バブル期の九〇年には千二百七十二人だったが、昨年は七千九百四十七人と、およそ六倍の水準だ。

 多重債務が主な原因である個人破産の件数も、この二十年で急増しており、自殺増と多重債務は深い関係があると言える。

 多重債務の解決法について誤解していると自殺に追い込まれやすい。誤解を解いておこう。

 【破産のデメリット】

 めぼしい財産がないときは裁判所で「破産」「免責」が認められれば、借金の返済義務はなくなる。しかし、「選挙権がなくなる」「破産したことが戸籍に載る」「給料が自由に使えなくなる」などと誤解している人が多い。

 通常、大きなデメリットは、個人信用情報機関に破産した事実が登録されて借金できにくくなることだけ。これは、他の解決法でも同様だ。

 【破産の費用】

 破産・免責で助かる道があると分かっても、弁護士から「報酬が三十万円必要」などと言われて「とても用意できない」と落ち込む人が多い。

 この対策もある。破産の手続きは司法書士に手伝ってもらってもいい。司法書士の報酬の方が安めだ。報酬の分割払いを認めてくれる弁護士や司法書士もいるので、問い合わせするといい。報酬を長期分割で払う法律扶助という制度もある。

 【破産以外の道】

 破産しか解決法が浮かばない人が多いが、債務を大幅に圧縮できる方法は他にもある。特定調停や任意整理は、多重債務になりかかった早期の段階でも使うことができる。住宅ローンを借りている上に消費者金融会社や信販会社から借金を重ねたときは、個人再生手続きも有力な選択肢だ。

 ■返すため、また借りる

 母親が多重債務を抱えて昨年夏に自殺した兵庫県在住の女性(45)が胸の内を明かしてくれた。本人もかつては多重債務者。「自殺しようか」と苦悩の日々を過ごした。

     ◇

 五年前、特定調停で多重債務を解決しました。消費者金融や信販の計十社に約四百万円の債務残高があったのですが、債務を大幅に減らせました。その七年ぐらい前から借金がかさんでいきました。当時の夫は自営業者。経営が悪化し、資金繰りや生活費の補てんで私も借金し始めたのです。

 解決の道があることが分からず「返すためにまた借りる」という自転車操業を続けました。

 中学生だった二男を連れて電車に飛び込もうとしたことがあります。「次の電車で、次の電車で」と思い続けて実行できませんでしたけど…。金融会社からひどい取り立てを受けて精神的に参っていたのです。今でも、家にいて電話や玄関のピンポンが鳴ると、条件反射でびくっとします。

 結局、多重債務の相談に乗っている団体を何とか知ることができ、特定調停のやり方を教えてもらえました。ただ、調停成立後も、うつのような状態でリストカットを繰り返しました。

 教会に通ったり多重債務者を救う活動に参加したりしているうちに精神が安定。何百人もの多重債務者の悩みを聞きアドバイスしました。

 それなのに、母の借金地獄を見抜けなかったのです。三、四百万円の残高があり、年金を担保に取って貸す悪質業者からも借りていました。母は一人で悩みを抱え込んでいたのです。

 多重債務からの脱出法は国民に理解されていません。トンネルの先に明かりがあるのですが、それが見えずに行き止まりになってしまうのです。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20051013/ftu_____kur_____000.shtml