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2005年03月10日(木) 00時00分

フジテレビVSライブドア 海外メディアの見方 東京新聞

 フジテレビが実施したニッポン放送の株式公開買い付け(TOB)で、株保有割合が三分の一超となり、ライブドアとの株争奪戦「第一ラウンド」は「フジ優勢」でひとまず終わった。過熱する株争奪戦は、欧米メディアからも注目の的だ。政財界から批判の声が上がる「出る杭(くい)」ライブドアの堀江貴文社長と、迎え撃つ「ニッポン株式会社」の姿は、彼らの目にはどう映っているのか。

 「今回の対決は起業家精神と古い資本主義の闘いだ。日本の旧体制が反射的に堀江氏を拒絶したということで、変化を極端に嫌う日本の企業風土の特異性がよく分かる」

 米ニューズウィーク誌日本版のジェームズ・ワグナー副編集長は、日本の企業社会に批判的だ。

 「敵対的M&A(企業の合併・吸収)は世界のビジネス界の常識。ライブドアのやり方より、M&Aの危険性を考慮せず、無防備だったニッポン放送・フジテレビ側の経営陣の方が悪い」とバッサリ。

 同誌はこの買収問題を度々取り上げている。ワグナー氏自身も同誌三月二日号のコラムで「ライブドア批判が潰(つぶ)す日本の未来」と題し、「日本は既成概念にとらわれない人材を切望していきたはずだ。実際、『コロンブスの卵』を立てようと頑張る日本人は増えている。だが、(中略)一部の政治家は斬新なアイデアを奨励するよりも、既存の『卵の殻』が割られることを恐れているようだ。日本の未来にとっては、決して明るい話ではない」と批判している。

 米国ではビジネス手法も含め「世の中は変わっていくものだ」という考え方が大前提だ。ワグナー氏は言う。「シリコンバレーでビル・ゲイツなどが新産業を興した時、面白がる風潮の方が強かった。旧体制の人々が、新しいチャンスを求めて新産業に挑戦した。自由な発想を受け入れ、失敗したとしても再起できる環境が後押ししている。だが日本では失敗は許されず、新しい試みを面白がって挑戦できる仕組みがない」

 堀江氏がニッポン放送株を取得した時間外取引という手法についても、「『法の抜け穴』を突いたもので、違法ではない。政府が禁止していないことなら何をしてもいい、というのが米国流だ」と話す。堀江氏に対しては「フジテレビをコントロールできる立場になったら何をしたいのか、十分な説明をしていない」と同コラムで注文をつけたものの、ワグナー氏は「政府の高官や産業界の重鎮らが、口をそろえて堀江氏の時間外取引を批判したが、『堀江をつぶせ』と、裏で連絡を取り合った連携プレーのように見えた」と話し、「堀江氏は旧体制側から“いじめ”に遭っている」とあくまで堀江氏に同情的だ。

 英フィナンシャル・タイムズ紙は二月二十八日付で、「日本の既存勢力が野望を持った若者と闘うため団結している」との見出しで、この買収劇を報じた。

 同紙東京特派員の中元三千代氏は「日本社会全体の変化を象徴しているニュースとして、読者からの注目度も高い」と話す。

 記事は、堀江氏について「若く、自信過剰で、けんかっ早く、むき出しの野望を見せつける姿は、日本の伝統的なビジネスエリートが嫌うすべて」だと紹介した。インタビューによる堀江氏のコメントとして、「経済界の重鎮らは、六十年かけて築いてきたシステムを壊されるのではないかと心配しているのだ」という言葉を載せている。

■変化そのものにアレルギーある

 中元記者は「日本的ビジネス慣行は、欧米では『分かりにくい』と受け止められている。誰がどう意思決定するのか見えない。記事では、放送業界の古い体質にとどまらず、日本の企業経営者に株主や企業価値に対する考え方が進んでいないことや、変化そのものに対するアレルギーが見受けられることを伝えた」。

 最近では、巨大銀行の東京三菱と三井住友が、UFJとの経営統合をめぐり競争を繰り広げ、日本でも敵対的買収もまったくのタブーではなくなった。

 だが、中元記者は「外国人は圧倒的にライブドアを支持だ。一つには、ライブドアが違法なことをしているわけではないのに、ルール違反だといわれるのが外国人には分かりにくい。もうひとつは、フジテレビがおかしいという見方で、特にニッポン放送が現在の株式数を上回る新株予約権を同局に与えようとするのはあまりにも変だとみている。もし裁判所の仮処分判断が、その通りに認めるのであれば、日本は異質だという日本たたきが起きるのは避けられない」と言い切る。

 ライブドアの攻勢にフジテレビなど既存メディアは防戦一方に見える。実は、米国では既存メディアがネット会社を買収する動きが広がっている。

■米国では新聞がネット企業買収

 昨年十二月、ワシントン・ポスト社が、マイクロソフト傘下のオンライン雑誌を買収。今年二月には、ニューヨーク・タイムズ社が、商品販売や金融情報などを提供するネット関連会社を四億一千万ドルで買収すると発表した。

 その狙いをニューヨーク・タイムズ社の企業広報統括責任者、キャサリン・マシス氏は「ネットでの広告収入の強化もあるが、インターネット利用者へ新聞を広げることができる。現在新聞読者は千三百万人。これに買収した会社のネット利用者二千二百万人が加わる。これでネットと新聞双方が利益を享受できる」と話す。

 ネットにのみ込まれるという既存メディアの恐怖心も、ワシントン・ポスト社の広報責任者、エリック・イースター氏は「ラジオがテレビの代替にならないように、ネットも新聞の代わりにならない。共存の余地はある」という。

 米国でも一九九〇年代はネットが既存メディアを脅かす時代といわれた。それが逆転したのは、ある“買収事件”からだ。二〇〇一年のインターネットの覇者と一時みなされたアメリカ・オンライン(AOL)によるメディア大手タイム・ワーナーの買収が、効果を上げなかった。当時米国ではまだブロードバンド(高速大容量通信)が普及しておらず、顧客が増えなかった。ネット業界が衝撃を受けている間に、既存メディアが買収に動きだした。

 上智大学の音好宏助教授は「はっきりしているのは、既存メディアとインターネット事業者は双方とも相手を必要としている、ということだ」と指摘する。

 フジテレビの日枝久会長も堀江氏も、ネットと放送の融合の必要性では、一致しているようにみえる。

 音氏は「今は過渡期だといえる。課題は、ブロードバンドの普及が都市部など一部地域にとどまっていることだ。今後十年で、低額で大容量のブロードバンドが全国に普及すれば、テレビやラジオとネットを総合してニュースや金融、広告情報を流すシナジー(相乗効果)が一層有効になり、一段と求められるようになる」と予測する。ワグナー氏はこう提言する。「今回の事例でヒステリックになり、市場の動きをけん制する法律ができる危険性がある。堀江氏のような人物が自由に活躍できる環境が日本の将来には必要だ。斬新なアイデアやそこから生まれるパワーを損なわない規制にとどめるべきだ」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050310/mng_____tokuho__000.shtml