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2005年03月09日(水) 00時00分

深川めし(東京都江東区)読売新聞


みそ仕立てのぶっかけ丼、深川宿の深川めし(1890円)

 忠七(ちゅうしち)めし(埼玉)、さよりめし(岐阜)、かやくめし(大阪)、うずめめし(島根)とともに「日本五大銘飯」のひとつに数えられている東京の深川めし。江戸前の魚貝をとっていた漁師たちが生み出した、アサリめしがルーツだ。

江戸っ子のアイデアが生んだぶっかけと炊き込みの2種類

 海を埋め立て、その面積を拡大させてきた首都、東京。しかし、江戸時代末期の江戸市中の名所の様子を描いた「江戸名所図會(ずえ)」を見ると、現在の江東区深川界隈は海に面していたことがわかる。寛永6年(1629)に深川の隅田川沿い猟師(漁師)町ができ、明暦の大火(1657年)以降、一層開発が進み、栄えた。その漁師たちの家々や屋台で食べられていたのが、深川めしだ。アサリの入った炊き込みご飯を思い浮かべる人もいると思うが、それは明治時代になってからと語るのは、深川めしの名店「深川宿」の主人、日東寺(にっとうじ)隆美さん。

 それ以前の深川めしは、アサリ汁をご飯にかけて食べるもので、「ぶっかけめし」ともいう。昔、漁師が舟の上でとれたアサリを鍋に入れて煮て、醤油(しょうゆ)で味つけした「ほうかし」が深川めしの起源という説もある。20年くらい前、実際に日東寺さんが食べた漁師の作った深川めしは、アサリとネギが入っただけの味噌仕立ての汁をご飯にかけた簡易なものだったそうだ。

 「その味つけが、とてもしょっぱくてね。体力を消耗する漁師には、塩分の濃いほうがいいのかもしれないけれど、店で出すにはちょっと……」。以降、日東寺さんは味つけの研究を重ね、赤みそと白みそをブレンドした独自のみそを生み出し、昭和62年に「深川宿」を開店させた。

 埋め立てが進み、アサリはごく近場の“江戸前”とはいかないが、同じ東京湾の木更津周辺のアサリのほか、愛知の三河湾でとれた良質のアサリを築地市場から仕入れている。



日東寺さんによるとうまいアサリの身の色は、うっすらとピンクがかかっているという

 作り方はいたってシンプルだ。沸騰した鍋の湯に味噌をとき、むき身のアサリと長ネギを入れる。再度沸騰させ、ネギの白い部分が透きとおってきたら火を止め、丼に盛ったご飯にかけ、最後に刻みノリをのせる。食べると味噌のコクにアサリの風味が見事に合う。そして、かむほどにアサリの豊かな滋味が口の中に広がり、さらにネギの香りが食欲を一層かきたてる。

 一方、炊き込みの深川めしはアサリ、長ネギ、油揚げを醤油や塩で味を調えて煮る。具を取り除いたその煮汁に水を加えて炊いたご飯の上に、先ほど煮たアサリなどをのせてかき混ぜる。最後に三つ葉、マツの実、白ゴマ、刻みノリをまぶしてでき上がり。

 「深川には木場があって材木を扱う人たちが多くいてね。大工などの職人が弁当や握り飯にしてもっていくようにしたのが、炊き込みの深川めしのルーツだと思うよ」と日東寺さん。漁師と職人とが同居した深川。ぶっかけの深川めしも炊き込みの深川めしも、どちらも「地の素材を使って手軽に食べられ、かつ栄養価の高い食事」を作り出した庶民の知恵がうかがえる。その食文化は海が遠のいても大切に守られていた。(文/荒井浩幸、写真/藤井勝彦)



深川宿(本店)
 電話03・3642・7878/11時30分〜ラストオーダー19時(日曜、祝日はラストオーダー17時)/月曜、第3火曜休(祝日の場合は翌日休)/地下鉄半蔵門線、大江戸線清澄白河駅A3出口から徒歩3分/首都高速清洲橋出口から清洲橋通り経由約10分

深川江戸資料館
 電話03・3630・8625/9時30分〜入館16時30分/第2、4月曜休(祝日の場合翌日休)/地下鉄半蔵門線、大江戸線清澄白河駅A3出口から徒歩3分/首都高速清洲橋出口から清洲橋通り経由約10分

富岡八幡宮
 電話03・3642・1315/境内自由/地下鉄東西線門前仲町駅1番出口から徒歩3分/首都高速木場出口から約3分

旅行読売2005年4月号より

http://www.yomiuri.co.jp/tabi/gourmet/fudoki/fd050401.htm