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2005年01月06日(木) 00時00分

しもつかれ(栃木県馬頭(ばとう)町)読売新聞


鮭と大豆のコク、野菜のさっぱり感、酒粕の香りがうまく調和し、実にうまい

 初午(はつうま)の日に作り、稲荷神社に供える、栃木県を代表する郷土料理。節分の残り豆、正月の塩鮭の頭、大根、人参など季節の食材を巧みに使った料理だ。今は県内でも作られなくなったふるさとの味を求めて同県馬頭町を訪ねた。

節分の残り豆や正月の塩鮭 巧みに活用した癒しの味

 「へぇ〜、初めて食べておいしいなんて言う人珍しいわねぇ」

 ここは、宇都宮から車で1時間の馬頭町にある藤田依子(よりこ)(63歳)さん宅。「まずは一口どうぞ」と出されたしもつかれを数分で平らげた記者を見て、藤田さんは驚きの声をあげた。

 しもつかれは、見た目はとても美しいとは言えない。大根、人参、大豆などがよく煮込まれて渾然一体となっている。口に入れると少し鮭の生臭みを感じたが、それも酒の香りに包まれていく。鮭と大豆のコク、野菜のさっぱり感が調和している。味は実にいい。

 「作り方は母から教わりました」。藤田さんと早速台所へ。「昔は7軒分、つまりたくさんのしもつかれを食べると病気をしない、と隣近所で持ち寄ったものです。各家庭で作り方も味も全然違います」と言う藤田さんの作り方を拝見。まず鮭(塩引き)の頭を2センチ角に切り、目玉やエラも捨てずに使う。これに熱湯をかけてアクと臭みをとり、塩を抜いておく。

 ちなみにしもつかれは本来初午(2月最初の午の日)のハレの日だけに作り稲荷神社に奉納するのだが、今は1月から2月にかけ、スーパーで鮭の頭が売られる間は何度でも作るという。



大根と人参、油揚げを加えしばらく煮たら、酒粕を入れて味を調える。

 大根と人参は、しもつかれ作りに欠かせない“鬼におろし”ですりおろす。おろし金と違い、1つ1つが大きく、断面がギザギザになるので、包丁で切ったものよりだしがよくしみこむ。

 圧力鍋に軽く炒って皮をとった大豆と鮭の頭、水、酢を入れて10分ほど煮る。鮭の骨が柔らかくなったら、大鍋に移し、すりおろした大根と人参、油揚げ、ちぎった酒粕を加えさらに1時間くらい煮る。最後にみりん、塩、醤油、だしの素などで味を調えたらできあがり。

 「栄養の偏りがちな冬場に、いかにバランスの良いものを家族に食べさせるか、下野(しもつけ)の主婦の知恵が凝縮した料理ですね」と藤田さんは誇らしげに語る。

 藤田さんの家から車で5分の、「道の駅ばとう」のレストランでも1月中ごろからしもつかれ(200円)をだす。持ち帰りも合わせ1日300食はでる人気商品だ。「いやあ懐かしい。昔はよく食べたけど、今は面倒で作らないから」と黒磯から来た50代の夫婦。

 正月や節分の残り物を巧みに使った、消化もよく栄養満点のしもつかれは、手間ひまかけた母の愛情たっぷりの料理。現代人が求める、まさに“癒やしの食”かもしれない。(文・写真/中 文子)



道の駅ばとう
 電話0287・92・5711/レストラン11時〜21時、直売所8時〜20時/無休(元日休)/東北本線氏家駅からバス45分、高田下車すぐ/東北道宇都宮ICから国道293号線経由約1時間

旅行読売2005年2月号より

http://www.yomiuri.co.jp/tabi/gourmet/fudoki/fd050201.htm