2004年11月18日(木) 00時00分

なりすまし詐欺　巧みな手口　主婦が録音（朝日新聞・）

　警察官や弁護士などを装って、交通事故の示談金名目で現金を振り込ませる「オレオレ（なりすまし）詐欺」の電話を広島市の３０歳代の主婦が録音した。「夫が事故を起こした」と示談を勧める偽の警察官、むせび泣く偽の夫…。今月１１日に広島市内の３０歳代の主婦が１０３７万円をだまし取られた事件と同じ手口だった。録音とメモで再現した。



　「オレオレ（なりすまし）詐欺」の手口は現在、警察官を装い夫の交通事故を口実に示談金の振り込みを迫るのがほとんどだ。県警によると、１０月に発生した４４件（実被害５件含む）のうち４３件の口実が交通事故で、うち警察官を装ったのが３４件だった。県警生活安全部は「今年７月後半ごろから広まり定着しつつある。今のところはこの手口に注意してほしい」と呼びかけている。

　県警によると、警察官以外には、事故相手や弁護士、夫本人に装って電話をかけて来るケースがある。息子や孫を装って現金をだまし取る「オレオレ詐欺」は県内では昨年５月に初めて被害が確認され、同年９月ごろから急速に広がり始めた。その後、借金返済を迫る金融業者役や、助けを求める孫や息子役など複数の人物が登場する手口が増加したという。

　現在、警察官を装った夫の交通事故の手口が大半を占めていることについて、同部は「『交通事故』という誰にでも起こりうる出来事を口実にしている。お金を振り込む前に周囲に相談してほしい」と話している。

　

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　１１月中旬の昼、主婦宅の電話が鳴った。男は県警の警察官を名乗り、夫が追突事故を起こして相手の車に乗っていた妊婦が病院に運ばれたと告げ、こう続けた。

　〓警察官役〓「完全にご主人の過失で業務上の過失傷害、人身事故という形になってしまうんですよ。ご主人に話したら、仕事と家庭に問題が出るので示談で終わらせてほしいと相手方にお願いしているんです」

　　さらに、滑らかな口調で続けた。

　〓警察官役〓「相手の方も、悪気があった事故ではないので示談でかまわないと言っていますので」「ご主人に変わります」

　　電話口から「うっ、うっ」とむせび泣く男性の声が流れた。

　〓主婦〓「もしもし」「大丈夫？」

　　問いかけても返事がない。警官役の男は「ご主人はかなり動揺している」と、事故の被害者を装う男に電話を替わった。

　〓被害者役〓「悪気があった事故だと思っていないんで、すぐに警察とか救急車を手配していただいたんで。保険会社の人が来ていますのでかわります」

　〓保険会社員役〓「示談の交渉が終わりました。被害者の奥様の入院費、１日当たり４２００円。３カ月と見積もって３７万８千円。車のレッカー代、修理代、代車代合わせて１４９万２千円」「このほか、奥様の後遺症が……。合計４３７万円になります」「これらは保険金で賄われるんですが、いったんご用意いただくことになります」

　〓主婦〓「すぐに用意できない」「１００万円ならなんとか……」

　〓保険会社員役〓「現場検証があと３０分ぐらいで終わるので、それまでに振り込みが確認できないと示談が成立しなくなります」〓

　　社員役の男は自分の携帯電話の番号を教え、銀行近くの公衆電話から電話するよう指示。その後、再び警察官役が登場した。

　〓警察官役〓「ご主人はいったん警察の方で拘束になり、夕方までは連絡がつきません。会社のほうにはこちらから連絡をつけましたので、奥様も口外なさらない方がいいと思います」

　　主婦は「オレオレ詐欺」ではないかと疑いながらやりとりを続けていたという。振り込みをしないまま、連絡が途絶えた。主婦は「口調は落ち着いているが、何度も登場人物がかわって一方的に話し、受け手に余裕を与えない感じだった」と話している。



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http://mytown.asahi.com/hiroshima/news02.asp?kiji=3971