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2004年11月16日(火) 15時42分

<おれおれ詐欺>被害129億円 寛容さにつけ込み巧妙化毎日新聞

 全国の「おれおれ詐欺」の被害総額は9月末までで129億円に上り、ここ数カ月、被害額は増加の一途をたどっている。なぜ、だまされたのか。「おれおれ詐欺」の実態を追った。【斎藤良太】
 「社会福祉に寄付したと思って早く忘れたいんです」。埼玉県中部の駅前商店街。薬局を代々経営してきた老夫婦は、取材に応じることを渋った。恥ずかしくて近所に知られたくない。思い出したくもない。可愛い「孫」に3度もだまされたことは自分たちだけ知っていればいいことだった。
 「友達のバイク、ぶつけて壊しちゃった」。昨年11月初め、横浜に嫁いだ長女(46)の二男で、当時高校1年の孫(17)を名乗る男から、突然電話が入った。祖父(78)も祖母(75)も驚いた。電話口に自動車修理工場の従業員が出た。「修理に132万円かかった。125万円でいいから振り込んで」。祖父は、急いで銀行から125万円を振り込んだ。
 それから2時間もせず、また孫から電話が入った。「実は、バイクで相手の車にもぶつけたんだ。1000万円もする高級車なんだ」。泣き出す孫に代わって修理工場の従業員が「エンジンなどを修理するのに、398万6000円はかかる」。老夫婦は、再び請求通り振り込んだ。
 さらに、翌日。今度は、高級車の所有者の社長が電話してきた。「事故車には乗りたくない。新車に替えるので300万円出してもらいたい」。社長の言う通り、社長名義の口座に300万円を振り込んだ。
 孫からは「お母さんには言わないで」と懇願されていたが、悩んだ末、長女に電話した。今度は長女が仰天した。「何言っているの。すぐ警察に行って」。その叫び声で、やっとだまされたことに気づいた。
 孫と信じて疑わなかった。最初の電話で孫の名前を問い返したので、それから相手は、孫の名前を名乗ってきた。「孫だけでなく、娘にも心配かけたくなかった」「警察ざたになるよりお金で解決できるならと」。祖母はうなだれ、反省の言葉をいくつも口にした。
 先月19日、この老夫婦ら20組の夫婦をだました詐欺グループ9人のうち、主犯格の男(25)に、東京地裁は懲役8年の実刑判決を言い渡した。
 男は20歳ごろから、「ヤミ金融」の店員になった。警察の目が厳しくなった昨春からは、ヤミ金の顧客名簿を使って、ダイレクトメールを送りつける「架空請求詐欺」を始めた。しかし、思ったほどだませず、6月ごろから「おれおれ詐欺」に転じた。このグループは昨年7〜12月、約50組から計約1億円をだまし取ったとされる。
 しかし、老夫婦は言う。「何か憎めないんですよ」。自分の孫に重なるためか、多額の現金を詐取されたのに、どこか寛容だった。「善意」に付け込む事件は、被害者の心のすき間をついていた。
 ◆登場人物多彩な「劇団型」が急増
 「おれおれ詐欺」が孫や子供になりすまして交通事故の修理費や借金の返済などをねだる従来の手法から、警察官や弁護士を登場させる「劇団型」や、暴力団組員が脅す「恐喝型」に移行していることが、警視庁「おれおれ詐欺等集中取締本部」の調べで分かった。同本部は「相手は開口一番に『おれおれ』と言うわけではない。孫だけでなく登場人物が多いことに気をつけて」と、一層の注意を呼び掛けている。
 同本部のまとめでは、東京都内の今年の発生件数(「恐喝型」を除く)は10月末現在で計1254件、被害額約26億7000万円。被害額は昨年同期比で約3倍になっている。5月までは50〜70件で推移していたが、6月に100件を突破し、8〜10月はいずれも200件を超えている。
 急増の要因は、警察官や弁護士、保険業者などが登場する「劇団型」の発生。警察官、弁護士になりすまして「示談にしないと交通刑務所に行くことになる」と言ったり、事故の被害者の葬式代名目で現金をだまし取る手口もあるという。
 「恐喝型」は主に暴力団が登場。組員を装って「お前の娘が飛び出したのを避けようとして親分の車が事故を起こした」などと言って現金を脅し取る。
 「おれおれ詐欺」という言葉が周知されているにもかかわらず、被害が減らない状況について、同本部は「巧妙に登場人物が現れるので、いったん電話を切って冷静になって対処してほしい」と話している。【三木陽介】
(毎日新聞) - 11月16日15時42分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041116-00000068-mai-soci