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2004年11月16日(火) 17時20分

[スクランブル]オレオレ詐欺 電話で「アメとムチ」 /広島毎日新聞

 ◇夫役は泣くだけ−−心揺さぶり、判断力奪う
 警察官などを装って親族が起こした交通事故の示談を勧め、現金をだまし取る手法で被害が続出している「オレオレ(なりすまし)詐欺」で、広島市内の30代の主婦が、自宅にかかってきた電話を録音、毎日新聞に提供した。この約7分間の通話を聞き、登場する何人もの“役者”が、主婦を動転させて現金の詐取を図る巧妙で悪質な手口の一端がみえた。【牧野宏美】
 ◇“事故”の実録テープ聞く
 「○○さんのお宅ですか。広島県警の者です。奥さん、落ち着いて聞いてもらいたいんですが……」
 主婦宅に、夫の氏名を正確に言える警察官を名乗る男から、電話がかかったのは11日昼ごろ。口調は、営業マンのように丁寧でなめらかだった。年齢は30〜40代の感じで、夫が追突事故を起こし、事故相手の車に同乗していた妊婦が頭部を強打して、病院に運ばれたと説明した。
 「完全にそちらの方に過失が出てしまいまいして……。業務上の過失傷害、人身事故という形になってしまうんですよ。だんなさんは仕事と家庭に問題が出るということで、示談で終わらせてほしいと、(相手に)お願いしているんです」
 夫役の男性に、電話を変わった。「うっうっ」と泣くばかり。主婦が「大丈夫?」などと問いかけても答えない。約1分間も泣き続けた。これでは夫の声ともそうでないとも、判別できないだろうと思った。
 「救急隊員が来ますので、だんなさんに安定剤を出してもらおうと思います。いつも服用している薬はないですか」
 今度は、警察官役の男が、混乱した夫に安定剤を飲ませて落ち着かせるという気配りをみせた。泣いてばかりで変だと思う気持ちはなくなり、この男への信頼感さえ芽生えそうだった。
 その後、事故相手役の別の男が登場。
 「全然悪気のあった事故だとは思っていないんで」
 鼻がつまったようなくぐもった声で、主婦を安心させるように言った。示談で無難に解決する方が、得策だと思わせるためなのだろうか。
 電話中、車の音や雑音などは聞こえかった。屋内からかけているようだった。その後、主婦が「私も現場に行く」などと言うと、事故相手役は話の矛先を変え、主婦の話にとりあわず、そのうちに電話は切れたという。録音テープは、ここで切れている。
 しばらく後、再び警察官役から電話がかかった。ここからは、主婦の話をもとに会話を再現してみる。
 すぐに、保険会社員役の男に代わり、示談金として、けが人の入院費や車の修理代などをすらすらと読み上げ、計437万円を要求した。主婦は「100万なら何とかなる」と言ってみた。
 「現場検証があと30分ぐらいかかり、それまでに振り込みが確認できないと示談が成立しなくなりますよ」
 保険会社員役は、携帯電話の番号を教え、銀行近くの公衆電話から電話をくれたら、振込先の口座番号を教えるという。
 また警察官役が出る。
 「だんなさんはいったん警察の方で拘束になり、夕方までは連絡がつけられません。会社の方にはこちらから連絡をつけましたので、奥様も口外なさらない方がいいと思いますよ」
 その後、別の保険会社員の男も登場し、振込先を巡り、多少のやりとりをしたという。
 この電話が切れた後も、主婦から電話をするなどし、やりとりは計約1時間にも及んだらしい。
 その約1時間後、主婦から聞いた携帯電話の番号にかけてみると、電源が切れていたという。
 主婦宅には今年4月にも同様の電話があったため、今回はすぐに詐欺と気付き、冷静に対処できた。主婦は「口調も落ち着いていて、ころころと登場人物を変えて畳みかけるような感じで電話を受ける側に余裕を与えない」という。さらに「通話中、電話相手の背後から、『お電話代わりました』という声が聞こえた。同じ部屋から複数の家にかけているのではないか」と話した。
 ◇無警戒なら信用
 なぜオレオレ詐欺などにかかるのだろうかと不思議に思っていたが、録音を聞いて、無警戒の時に電話がかかってきたら、私もどうだかわからないと思った。不安をあおる一方で気配りもみせ、「アメとムチ」のような駆け引きで、判断力を鈍らせる。オレオレ詐欺を他人ごとと思わず、普段から用心しておくことが、被害防止のためには大切だと痛感した。

11月16日朝刊 
(毎日新聞) - 11月16日17時20分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041116-00000202-mailo-l34