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2004年06月15日(火) 02時22分

迫れるか 心の軌跡 精神鑑定決定 聞き手への信頼かぎ西日本新聞

 長崎県佐世保市の小六女児(11)による同級生殺害事件で、長崎家裁佐世保支部が女児の精神鑑定実施を決めた。事件の全容解明に関係者の期待がかかる一方で、小学生に対する精神鑑定の難しさを指摘する声も少なくない。女児の「心の闇」にどこまで迫れるか。専門家に精神鑑定の焦点と課題を聞いた。

 □異 変

 女児に「変化が起きた」と周辺が証言するのは、今年一、二月ごろ。熱中していたミニバスケット部を「宿題がやれないなら」と親に言われ、辞めさせられたころだ。

 「明日もガンバロー」などと明るい日記を掲載していたホームページ(HP)への書き込みは二月下旬で中断。四月に再開した日記には「あ〜、暇暇暇暇」。言葉遣いは荒くなり、バイオレンス小説「バトル・ロワイアル」を模した自作小説などが出てくる。

 インターネットにのめり込み、仮想と現実を区別する感覚がまひしていったのか。お茶の水女子大文教育学部の坂元章教授(社会心理学)は「区別はできていても、暴力を肯定するメディアに触れ続けることで、暴力を実行する回路が開きやすくなることは考えられる」と話す。ただ「ネット問題の小学生に関する研究はほとんどなく、今後の研究課題」という。

 □殺 意

 被害者のHPに「ぶりっ子」などと繰り返し書き込まれた女児。「この世からいなくなればいいと思った」。県警の調べに対し女児は動機をそう話している。

 事件当日は、持参したカッターナイフで被害女児を切りつけ、動かなくなるまで見届けたとされる。発端となったみられるトラブルと、事件との落差に、大人たちは首をひねる。

 動機の解明は精神鑑定の最大の焦点。だが、日本児童青年精神医学会理事の高岡健・岐阜大医学部助教授は「聞き手との信頼関係がなければ、本心は聞けない」と言う。女児は六回におよぶ付添人との面会でも事件を語ろうとしなかった。鑑定人が女児と信頼関係を築くことが、鑑定の出発点となる。

 □課 題

 少年への精神鑑定はケースが少ない上に開示されないため「情報の蓄積がない」と、児童精神科医師の山崎晃資氏(東海大相模高校長)は語る。過去には、大人を専門とする鑑定医が出した結果が「不適切」とされ、再鑑定になったケースもある。

 年齢が低いほど鑑定は容易ではないとされる。言葉での表現が幼いため、絵を描かせたり遊具を使ったりして反応を確かめる手法がとられるが、子どもが反応を示さないケースもあるという。山崎氏は「メールでやり取りするのも一つの方法」と提案した。

 鑑定結果の扱いにも注文がついた。神戸大学の広木克行教授(臨床教育学)は「鑑定で出された障害名が独り歩きし、それだけが原因と結びつけられてはいけない」と述べ、事件の背景に潜む複合的な要因を見落とさないよう求めた。

■女児いつもより緊張 治療・更生へ「鑑定役立てば」

 長崎県佐世保市の小学六年女児殺害事件で、付添人の弁護士は十四日、少年審判終了後に記者会見し、補導された女児(11)の審判廷での様子について「これまで面会したときより緊張した様子だった」と述べた。

 迫光夫、川添志両弁護士によると、女児は水色のブラウスにえんじ色のジャージー姿で裁判官三人の正面に座った。女児の左側に付添人三人、右側に家裁の書記官と調査官。女児の両親は女児の後ろに座り、うつむいていたという。

 川添弁護士は、精神鑑定について「女児の両親も納得している。犯行時の精神状態よりも、犯行に至る背景を含め、あらゆる角度から調べるものになるだろう」と話した。

 さらに「女児の治療や更生に役立ち、同世代の子どもを持つ人や社会の不安感を解消する結果が出ることを期待したい」と語った。

少年審判

 家裁が少年法に基づき、非行を犯した少年の更生を図るための処分を決める手続きで、一般の刑事裁判に当たる。裁判官は1人の場合が多いが、今回は3人の合議制。少年の保護と更生の理念により非公開で、保護者や付添人(弁護士など)の出席が認められている。処分は、児童自立支援施設送致、保護観察などがある。

 昨年長崎市で起きた男児誘拐殺人事件も審判は合議制で行われ、第1回審判で精神鑑定の実施が決定。その後58日間の鑑定留置を経て審判が再開され、中学1年(当時)の男子生徒は、児童自立支援施設に送られた。(西日本新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040615-00000027-nnp-kyu