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2004年01月29日(木) 00時00分

SFCG (旧商工ファンド) に自営業者怒り 公正証書を『不公正利用』 東京新聞

 自営業者らに高金利で融資する「商工ローン」の大手・SFCG(旧商工ファンド、東京)が、「公正証書」の制度を乱用して強引な取り立てをしている−という声が、自営業者や商工ローン問題に取り組む弁護士から上がっている。借り手が公正証書の知識に乏しいことにも原因があるが、弁護士らは、弱者を保護するため制度の改善が必要だと訴えている。 (間野 丈夫)

 ■『説明なく作成した』

「公正証書を作るなんて何の説明もなかった。たくさんの契約書類の中に委任状が含まれていたらしいけれど、私も四人の保証人も、気づかなかったのです」

 自営業者の女性(50)は訴える。昨年九月中旬、SFCGから公正証書による強制執行をかけられ、取引先の未回収代金をはじめ、保証人四人の銀行口座、生命保険、給料などを差し押さえられてしまった。

 差し押さえで大口取引先の信用を失って取引停止になり、経営危機に陥った。友人の給料差し押さえは、職場での友人の信用を傷つけ、生活費を奪った。「自分たちが法律に無知だったことは反省しています。けれど、こんな弱い者いじめが許されるのでしょうか」

   ×   ×

 女性は一九九七年、SFCGから年利約39%で四百万円を借りた。公正証書は二〇〇二年夏、返済方法を変更した際に作られたらしい。その後、さらに二百万を追加で借りたが、月々の返済が苦しく、税金や社会保険料を滞納しないと返済が続けられなくなった。

 そんな時、利息制限法の上限金利(百万円以上は年15%)で計算し直すと、借金の残高が大幅に減ることを知った。

 ■払い過ぎ

 貸金業者には、出資法で上限金利が年29・2%(二〇〇〇年五月までは40・004%)まで認められるが、これは借り手が自由意思で借り、契約書面などの厳しい条件を満たしたときに限って許される。このため多重債務者の救済時には、利息制限法で再計算することが多い。

 そこで女性は昨年九月初め、弁護士を通じてSFCGから取引明細を取り寄せて再計算した。すると、同社が主張する債務残高が約五百万円なのに対し、約二百八十万円の払い過ぎになったという。このため、過払い金の返還訴訟を起こすことにし、弁護士が同社に連絡した直後、強制執行された。

 ■弁護団、制度是正訴え

 昨年十一月下旬、東京地裁の記者会見場。「日栄・商工ファンド対策全国弁護団」の弁護士が並んだ。団長の木村達也さんが強調する。「これでは不公正証書です。弱者を縛る手続きの一つになり、(過払いで裁判を起こす)債務者を裁判に耐えられない状況に落とし込んでいます」

 弁護団は「SFCGによる司法制度を利用した悪質な取り立て被害が全国で多発している」としており、この日、最高裁と日本公証人連合会を訪れ、同社による司法制度の乱用の是正を求める要請書を出した。

 ■要 請

 弁護団によると、同社による公正証書を利用した差し押さえの問題点は、第一に、借り手が証書を作ったという認識がないこと。契約書は何枚も重なった複写式で、借り手は下の方に委任状があることに気付かず署名してしまう。この委任状により、同社側の司法書士らが、貸し手と借り手双方の代理人となるのも問題だとする。

 第二は、公正証書は利息制限法の範囲内の貸し付けでしか作ることはできないのに、同法を超えた金利の取り立てに利用していることだ。

 このため弁護団は(1)複写の委任状や双方代理の書面は受け付けない(2)受け付ける場合は、借り手に公正証書を作る意思があるか直接確認する(3)利息制限法に違反する契約では公正証書は作らない(4)強制執行に向けた執行文を作る時は、取引経過を調べ、利息制限法で計算した後の残高について作る−などを公証人連合会に要請した。

 ■SFCG側『明確に説明している』

 一連の指摘について、SFCGの顧問弁護士は「公正証書を作ることは明確に説明し、強制執行が行われる場合があることも併せて説明している。個別ケースでは担当者の説明があいまいだったことがないとは断言できないが、一般的には借り主は作成を了解し、公正証書が重大な書類だという認識を持っているはず」と反論する。

 また「(強制執行は)まず和解交渉をして相談に乗る努力をし、交渉の余地がないと判断したときに着手する」と説明。公正証書と利息の関係は「公正証書は既存の契約を確認して強制執行力をつけるもので、その契約を(利限法の利息で)変更するものではない」としている。

 一方、日本公証人連合会理事長の筧康生さんは「複写式の委任状はSFCGだけでなく、ほかでもよくあり、公正証書を作った記憶がないとの苦情は少ない。代理人は使者のようなものなので、債権者側の者が債務者の代理人になっても債務者の不利にはならない。本人の意思を確認する必要もない」と説明。

 「利息制限法を超える部分がどのくらいかは、証書を作る時には分からない。借り手が任意で返した(適法の)利息がどこまでかをチェックするのは公証人の仕事ではなく、裁判で争うことではないか」とし、是正策には否定的だ。

 公正証書  法務大臣から任命された公務員で、裁判官や検察官のOBなどが務める「公証人」が、重要な契約について法律に基づいて作る公文書。高い証明能力があるので、裁判所の判決を待たずに強制執行の手続きを取ることができる。遺言やお金の貸借、不動産の賃貸借、離婚に伴う養育費支払いに関する公正証書などがある。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040129/ftu_____kur_____000.shtml