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2004年01月03日(土) 00時00分

NTTデータ関連へ厚労・社保官僚天下り 複雑 年金システムが結ぶ縁 東京新聞

 厚生労働省や社会保険庁の官僚がNTTデータに天下る−。やや意外な取り合わせの官民癒着が浮かび上がった。癒着の温床は年金を記録管理する巨大コンピューターシステムだ。年金不安をよそに、税金を使って役人が退官後の悠々自適の日々を送る、「年金利用型もたれ合いシステム」を探ると。 (蒲 敏哉)

■国の基幹『運営に必要』

 東京都三鷹市にある社会保険業務センター三鷹庁舎には、年金情報が集積している。同庁舎はNTTデータ三鷹ビルの三階に間借りする形で存在している。

 四階建てのビル内にはNTTデータのコンピューターが並ぶ。社会保険庁の職員は「全国三百十二カ所にある社会保険事務所や百六十五万の企業、被保険者約六千万人のデータを、氏名や基礎年金番号から瞬時に検索できるんです」と説明する。厚生年金や国民年金の資格取得届け出が提出されると、データが三鷹庁舎のシステムに登録され、記録更新や検索処理が行われる仕組みという。

 ほとんど窓がないビルには「三鷹庁舎」の看板はなく、ロビーの「NTTデータご案内」表示板に小さく掲げられているだけだ。

 厚生労働省、社会保険庁の官僚が、所管外ともいえるNTTデータに天下りを始めたのは、同社設立の一九八八年からだ。退官後、数年の間を置くものの、厚生省(当時)の東海北陸地方医務局長が役員となり、その後、同省審議官が九七年に後任に就任する。二〇〇一年に、入れ替わる形で同省出身の総理府(現内閣府)社会保障制度審議会事務局長が役員入りした。

 同社広報室の杉本則彦課長は「国の基幹システムを運営する事情から、知見のある方に役員に加わっていただくのは重要だ。天下りは、官僚が無理やり民間企業に再就職することだが、わが社の場合、会社としての必要性に基づくものです」と話す。

■賃貸料は『電話代』で

 この年金システムは一九八〇年から稼働している。担当する社保庁運営部企画課は、NTTデータの建物に三鷹庁舎が入っている事情について「特に賃貸契約は結んでいません。パッケージという形で料金に盛り込まれています」と明かした上で契約内容を説明する。

 「コンピューターやソフトはNTTデータの所有物だが、こっちはコンピューターや回線、端末を利用する内容だ。予算は期限を区切らない、長期の随意契約を結んでいる。料金名目はデータ通信サービス料、いわゆる電話代です」

 契約金額は、九八年度が五百五十二億円だった。だが新年度予算案では、年金改正絡みで新たなシステム開発が必要なため、八百十八億円を計上している。予算処理としては、ほとんどが年金の積立金からなる厚生保険特別会計の福祉施設事業費からの支出だ。

 受注した巨大ビジネスを、NTTデータは傘下の関連会社に発注している。実は、この関連会社にも官僚が、退官後間を置いて天下っている。

 NTTデータシステムサービス−。この会社にも九六年から社保庁業務センター副所長や保険指導課長、地方課長など計七人が退官後数年の間を置き、役員として再就職(いずれも既に退職)した。現在は厚生省(当時)地方医務局長、社保庁首席社会保険監察官が役員として勤務する。同庁のオンライン運用管理官や社会保険監察官も部長に就任している。

 総勢十一人もの受け入れに同社の高橋季通総務部長は「うちは社会保険庁のシステム開発を請け負っており、ノウハウがどうしても必要だ。個々の方の人間関係のつながりから、採用が行われているだけです」と語る。

 「うちも社保庁のオンラインシステム開発にかかわっている関係から、役所にお願いして来ていただいている」。関連企業で港区虎ノ門のビル五階に事務所を構える「社会情報クリエイト」の望月豊総務部長は強調する。同社は社保庁保険指導課長が役員(既に退職)だった。この元課長と入れ替わる形で、後任の保険指導課長が役員になっているほか、厚生省(当時)情報企画室長が役員、同庁システム監査課長が部長を務めている。

 NTTデータをはじめとする一連の天下り人事への厚労省側の受け止めは。

 厚生労働省人事課は「こっちから企業に申し込むことはない。むしろ、企業側からのアプローチだ。社会保険行政に精通した人材がほしいという要請だ」としながら続ける。

 「国家公務員法で直前まで利害関係がある企業には退官直後、就職できないが、規定年限を経過しての就職先に国が関与することはない。組織的に、順送りでやってるわけではない」

 社会保険庁総務課は「今は民間会社へ行くこと自体がうるさいので、われわれはほとんど何もできない」。NTTデータや関連企業に多数が再就職していることに対しては「OB同士の人脈や在職中の仕事で会社側の人と人間関係ができて就職していっているのだろう」と推測する。

 社会保険庁側は、NTTデータがほぼ独占する形で発注が行われている現状についても解説する。

 「昔は電話回線は電電公社しかなかったからだ。うちのデータシステムは外部から完全に遮断され、安全に運用されることが重要だ」。さらに「こんな巨大なシステムは唯一無比だ。巨額を言い値で請求されていると言われるが、ぎちぎちつめて交渉している。ぼられていると言われるのは心外だ」とも。

 今年の公的年金制度改革案で、与党は昨年末、厚生年金の保険料率の段階的引き上げを決定した。本紙の試算では、二〇一七年に、保険料率の上限(18・35%)に達した段階で、年収四百五十万円の片働き家庭で現在より月々約九千円のアップに。受け取る年金額は二万三千円のダウンだ。「負担は重く、給付は軽い」制度の中、「官僚」と「税金」が一部の企業に流れ続ける。

■専門職の巨大融合『しょうがない』?

 厚労省で年金業務に携わった経験のある幹部は「年金システムは複雑で、理解しがたい部分が多かった。それに加えてコンピューターシステムなど分かるはずもなく、専門の職員でも手こずっていた」と振り返る。同時に天下りについて「就職にしても人事とか官房とかでなく、現場レベルで融通しあってあっせんしている。個別の局の対応で、人事課の関与するレベルじゃない」と反論した上でこう明かす。

 「結局、今のデータシステムは官と民の専門職が一緒になり初めて機能する巨大な融合体だ。これを天下りと言うが、実際にこれでしか機能していないんだからしょうがないんですよ」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040103/mng_____tokuho__000.shtml