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2003年12月29日(月) 13時41分

社説 年金の信頼取り戻す幅広い改革論議を日経新聞

 来年度の公的年金制度改革での改革案は保険料を18.35%で固定し、給付は現役賃金の50%を維持するという案で決まった。しかしこれが信頼を回復する抜本改革になるとは思えない。基礎年金の国庫負担増額の道筋もはっきりとしない。ほかにどんな案が考えられるのか。その将来見通しも具体的に示すなど、国民にわかりやすい形で議論を深めていくことが望まれる。

抜本に値しない与党案

 今後ますます平均寿命が延び、少子化に歯止めがかからないことが予想される中、年金財政を破たんさせず「制度の持続的安定」を確立するのは容易ではない。しかもそのためには年金に対する国民の信頼回復が必要だ。来年度の改革はその2つの課題の解決に向かって前進することが求められているのである。

 過去、各政党は人気取りのために負担を抑え、年金額を高めてきた。そのツケがあまりにも大きいためにそれを一挙に解決し、多くの人が納得するような改革案は残念ながら見当たらない。そうした中で厚生労働省が示した「保険料固定、給付自動調整」という案は、保険料負担があまり重くならないように限度を設けるとともに、基礎年金の国庫負担割合を現在の3分の1から2分の1に引き上げるという内容だ。

 年金額は今後の出生率や雇用の動向あるいは経済成長のいかんによって決まる。今の若い世代が今後負担増を負う一方で、年金額が下がると予想されるので、現在の高齢者との間の世代間不公平は解消されないという欠点はあるが、現実的な改革案ということはできる。

 それはこの案に「社会、経済をより望ましい方向に持っていくよう最大限の努力をする」という条件が内包されているからだ。出生率がもし高位推計である1.63まで上がれば、年金額は当然増える。かつては出生率低下に悩んだスウェーデンやフランスなどは、きめの細かい対策の結果、今では1.5から1.8の間にある。日本でも本気になって努力すれば不可能な話ではない。

 自民、公明の両与党は年金給付を現役男子勤労者の可処分所得の50%を維持するために、厚生年金の保険料を18.35%まで引き上げるとした。これでは給付自動調整ではなく、まず最初に給付を決める「給付固定」である。出生率を中位推計の1.39と予測する、つまり従来通りほとんど何も対策をとらないことを前提にしている、と言われてもやむを得ないだろう。

 将来の給付を上げるためには保険料をいじるのではなく、少子化、雇用での対策、それにいかに経済成長率を高めるかの努力の結果による。その条件をどう達成していくかが示されなければ「保険料固定、給付自動調整」の特色は生かされない。その意味で今回の与党決定による案は抜本改革からより遠ざかってしまった。基礎年金の国庫負担割合に関しても来年度から6年間かけて2分の1にするとなったが、公明党が主張する所得税の定率減税の廃止を財源とすることも見え隠れし、明確な道筋を示していない。

 このほかに論議されている抜本的な改革案もいくつかある。経済界や連合が強く主張しているのが、基礎年金を全額税金でまかなう「税方式」である。未納、滞納問題も解消し、サラリーマンの専業主婦である3号被保険者の取り扱いも解決する。増税は避けられないものの、基礎年金の保険料負担はなくなる。

 長所は多いが欠点もある。現在既に年間16兆円の支払いを必要とする。毎年増加していく給付費に消費税を充てるとするならば、その引き上げも続いていく。税を財源とする以上、収入が多い高齢者には支給制限することが考えられるが、所得の把握が正確にできるのかという問題も生じる。

各案のシナリオ示せ

 スウェーデンが長期間の論議を経て採用したのが全国民が報酬比例年金だけに加入するという方式。保険料を納められない無職や低所得層には税金で最低保障年金を支給する。民主党はこれに近い案を提唱しているが、報酬比例年金の水準が示されておらず、これでは議論が十分にできない。また保険料を納めない低所得者の正確な所得把握も欠かせない。それが不完全ならかえって不公平感が増すだろう。

 いずれも一長一短あるが、国民の多くはもとより、専門家とされる人たちにとっても各案の本当の姿がよく見えてこない。それは様々な前提を置いて、給付と負担がどのようになるかという明確な将来像がないからだ。それでは判断のしようがないし、ほかにどんな政策が必要なのかもわからない。政党は「官僚がデータを出してくれない」と嘆く前に、国会の調査権を活用していろいろな将来ビジョンを国民の前にわかりやすく示し、議論するのが筋である。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20031229MS3M2900G29122003.html